しろくま "実験の民主主義" 2026年6月14日

実験の民主主義
実験の民主主義
宇野重規,
若林恵
「本書は私がこれまで民主主義を論じるにあたって、つねにインスピレーションの源であったトクヴィル(ドクヴィル――平等と不平等の理論家』二〇〇七年、現在は講談社学術文庫)とブラグマティズム(『民主主義のつくり方』)をつなぎ合わせるだけでなく、「行政府」というものに対し、かなり踏み込んで検討する著作である。 私たちが民主主義を論じるにあたって、どうしても関心が向かうのは選挙であり、議会であり、政党である。しかしながら、本書ではフランスの政治学者ビエール・ロザンヴァロン (一九四八ー)の「良き統治ーー大統領制化する民主主義』(みすず書房、二○二○年)を導きに、あえて行政権、あるいは執行権における民主主義の可能性について踏み込んで論じている。行政府とは何か、公務員とはいかなる存在か、さらには現代的な「プラットフォームとしての行政府」とはいかなるものかについての考察こそ、本書の大きな特色であろう。 もう一つの特色は、トクヴィルがアメリカで重視した「アソシエーション」についてである。伝統的な社会のしがらみから解放された個人は、結果として他者との結びつきを失って孤独になりやすい。そのような傾向をトクヴィルは「個人主義」という概念から分析したが、 その彼が対策として提示したのが、人々の自発的結社「アソシエーション」である。アメリカの地域社会では、普通の市民が相互に協力し合いながら、地域の諸課題を解決している。 その手段となっているのが地方自治の習慣と、人々の「アソシエーション」であった。 では、はたして「アソシエーション」の現代版として何が期待できるのか。通常であれば、 各種のNGOやNPOが注目されるところであるが、本書では意外なことに「ファンダム」、 すなわちアイドルやアニメ、スポーツ、音楽やゲームをめぐるファン集団に着目する。さらにはそこに伝統的な政党に代わる人々の組織化の可能性すら見出す。突飛と思われるかもしれないが、すでに現実のポビュリスト指導者はこのようなファンダムを十全に活用している。 民主主義の実験はこの潮流のただなかにある。」 (ⅵ-ⅶ頁)
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved