和月 "明日、あたらしい歌をうたう" 2026年6月13日

和月
和月
@wanotsuki
2026年6月13日
明日、あたらしい歌をうたう
なんて素敵な物語なんだろう。 作品全体に歌が、音楽が溢れていて、人生を進めるために背中を押してくれる。苦しみに苛まれた時も、喜びに心踊る時も、傍には音にのせた言葉が居る。 角田光代さんは本作について、「自分がなぜここに生まれてきて、なぜ生きているのかわからない人たちが、あるとき、生きるにあたいする世界と出会う。これはそんな物語です。」と語っている。 実際に音楽によって救われたことのある著者だからこそ、単に音楽を題材にした青春小説ではなく、ずっしりと響く輝きを宿した作品が生み出されているのだと感じた。 作中に登場する歌詞は忌野清志郎さんの曲だと知り、本を読み終えてから彼の曲を調べた。真っ直ぐに愛を歌う映像をみていると、はじめて聴いたのにすごく心に沁みた。コメント欄には件のアーティストに救われた人達で溢れていて、その言葉の数々は、くすか達が抱いた希望と同じ形をしているように感じられた。 終盤、過去・現在・未来が交錯するシーンは、この作品を読んだ読者に希望を与えてくれている気がする。他者に対して愛を持つことの喜びも苦しみもまざまざと描かれていて、新やくすかの心情が細やかに表現されている文章が胸を打つ。 今が灰色だったとしても、人生を変える何かに出会える日がきっと来る。その「いつか」に向かって生きていきたいと思わせてくれる。読み終えた時には、表紙の花々が身体の内側で咲いている。人間讃歌の物語だった。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved