ブタコヤブックス "イン・ザ・メガチャーチ" 2026年6月15日

イン・ザ・メガチャーチ
遅ればせながら本屋大賞作品をようやく読み終えることができた。当店にて開催した読書会の課題図書に選ばれたおかげである。 「神がいないこの国で人を操るには、”物語”を使うのが一番いいんですよ」という、この本の帯にも書かれている作中のセリフを読んだ時、かつて私が教員をしていた頃に出会ったとある校長のことを思い出した。 この校長も、やたらと「ストーリー」という言葉を使う人だった。「ストーリーのある学級経営をしなくちゃいかん」「ストーリーのある修学旅行をだな」「ストーリーのある卒業式というものは……」 言いたいことはわからんでもないのだが、それは一体、誰のために行う、何のための何なんだと、当時の私は拒絶した。 あれから数年が経ち、私は名古屋に小さな本屋を構えることになった。公務員の世界から商売の世界へと、全く違う世界への転身のために、いくつか指南書を読んだ。そこには、おおむねこんなことが書いてあり、思わず閉口してしまった。 【これからの時代の小売店は、ただ商品を並べて売るだけの場所では生き残れない。店には思想があり、世界観があり、そこを訪れるお客さんが「この店で買う理由」を感じられるような、”ストーリー”が必要なのだ】 オープンからまもなく一年が経つ。ニューオープンの本屋が一年を迎えるといういかにもなストーリーの中に、私もどっぷりと浸かっている。浸かっているなぁぁぁぁと思いながら最後まで一気に読んだ。 あと、小学校高学年の頃に、クラスの声が大きい人達が、好きなアイドルの話を平気でしているのが羨ましくって、鈴木あみを無理やり好きになったなあだなんてことも読みながら思い出した。モー娘。も当時の流行りに乗って、とりあえずなんとなく好きになったなあとか、ハロプロの人たちが紅組と黄色組と青組とに分かれたやつとかのCDとかも持ってたなあとか、ミステリアスで売り出していた倉木麻衣のライブに行きたいがために爽健美茶のシールを集めたなあとか、まあとにかくパンドラの箱を開けたかのようにどばどばと出てくる出てくる。 これからの人生に還ってくるのは、これまでやってきたことよりもやってこなかったことのほうだとか、推しに夢中になることで現実をスワイプしてしまうことだとか、ストーリーを仕組むことの是非だとか、そういう色んな今を生きている人間の周りにこびりついているものをでっかい教会の模型の中に入れてぐわぐわぐわぁぁぁぁとかき混ぜたミックスジュースを飲まされたような読後感で大変面白かった。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved