DN/HP "ボビーに首ったけ (角川文庫..." 2026年6月16日

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2026年6月16日
ボビーに首ったけ (角川文庫 緑 371-11)
五つ目に収録されている「朝になったら、タッチミー」を読んだ。 青年たちが暇つぶしに訪れた夕方の苫小牧の港、そこでフェリーから降りてきたところを偶然みかけたハーレーに乗った女性の後を興味本意で追い始める。海沿いを走り続けるその行程は、やがて夜になり仲間たちは脱落しさらには朝を迎えることになる。その10時間を超える行程、ページ数で60ページ弱の殆どをバイクから降りることなく、通り過ぎる景色を、バイクの大胆な動きと精密な仕草を、バイクと自然から受ける身体感覚を、あるいは前を走る女性への幻想までを、少しの薄い比喩を被せながら詳細に繊細に描き出していく。文章も小説もとても美しいと思った。 と同時に目的(地)を窺わせることすらなく走り続ける女性の行動に、それ以上に偶然みかけた彼女を執拗に追いかけ続けるという青年の行動、追いかけられ続ける女性(毅然とした態度をしているけれど)のことを思えば、そこに不穏さを、青年本人もまだ気づいていない暗い欲望(は後に幻想として表れる)を感じずにはいられない。美しさのなかに広がっていく不穏さ気持ち悪さを感じながら読み進めていけば、その不穏さは少し意外な、それでも予想していたような(少なくとも青年には)衝撃的な結末へと落ちていく。 これは秋の北海道をオートバイで走り続けることを、現実的にも幻想的にも美しく描いた小説であると同時に、追い続けたものが、タイトルとは裏腹についには手を触れることもなく目の前から消え失せてしまう、そんな世界の人生の、あるいは青春のままならなさも美しい描写と不穏な雰囲気と衝撃的な結末で突きつけてくる小説だ、と読めなくもない。 なかなか凄い小説では、と思った。
ボビーに首ったけ (角川文庫 緑 371-11)
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