
ななり
@bluebook_mark
2026年6月17日
多類婚姻譚
凪良ゆう
読み終わった
歴史小説や時代小説、あるいはそこまで遡らずとも昭和初期あたりを舞台にした物語を読んでいると、本人たちの意思が蔑ろにされたまま、あっさりと婚姻関係が結ばれるという場面に割りとよく出会います。家格が重要視され、恋愛結婚も稀という不自由な時代はしかし、夫婦になる“だけ”ならば障壁の少ない時代ではあった。それと比べて現代は真逆です。ほとんどの人が家という単位の軛から解放され個人として自由に生きられるようになった一方、本当の夫婦へと続く道には障壁が幾つも立ち塞がり、それに対してふたりで、ときにひとりで向き合わなければならなくなった。セクシュアルマイノリティ、ジェンダーギャップ、貧富の差、思考における性差のずれ。ただ愛している人と婚姻の契約を結びたいという一点の望みが、自由の代償のように遠くなってしまった私たちの切実な祈りが、どうかすべての人たちへ、何よりもこの国のルールを変えられる人たちへ届きますように。そう思わずにはいられない小説でした。



