Dragonfly's Facility "博士の愛した数式" 2026年4月1日

博士の愛した数式
ボロい離れに暮らす、80分しか記憶が保たない老人。その生活に家政婦として入り込むことになった主人公。老人の勧め(というかほぼ有無を言わさない指示)で入り浸ることになる主人公の息子。その「疑似家族」には大きな冒険も起こらない。どんでん返しもない。ただただ、私達は彼らの生活を見る。  その生活を邪魔する者がいても、理由を知れば納得。その者も含めて、私達はその生活を眺める。  その果てにやって来る誰しも逃れ得ぬものを目の当たりにして、ようやく読者は気付く。『博士の愛した数式』が何を指し誰を指すか、そして間違いなくこの疑似家族は幸せであることを。これを裏打ちする小川氏の構成力と下調べの緻密さこそが、本作を名作たらしめている。
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