しろくま "ホロコースト後の機能不全 ド..." 2026年6月18日

ホロコースト後の機能不全 ドイツ、イスラエル、犠牲と加害の関係
「本書は、こうした問題群を「ホロコースト後の世界の構造」としてとらえている。この構造は相互に入り組んでおり、国際社会全体に及び、このため連関がさらなる連関を生み、 世界に大きなねじれをもたらしている。私は現在、国際社会が機能不全に陥っているのは、 ホロコースト後に世界の秩序が再構築されてゆくプロセスに瑕疵があったためではないかと考える。瑕疵は意図して埋め込まれたわけではなく、むしろ良き意図からスタートしたものの、さまざまな力学の中で変質し、その過程で本来の意図とは異なる意図も加わり、結果として国際社会は機能不全に陥っていったのだ。  なぜこうなるのかと問えば、多分、ホロコーストがその規模においても性格においても、 巨大な不正であったためだろう。一度こうした不正がなされると、これを「正す」ということ自体、極めて大きな負荷を伴う。不正によって生じてしまった現実が存在する状態で、 不正が起こる前の状態へ戻すことを最終目標にすることはもはや不可能である。だからといって不正をそのまま放置することもできないので、これに対応しようと違う方向から新たな力が加えられる。それは必然的に新たなゆがみを生む。  したがって本書は問題の解決策を示すものではない。むしろ、糸がもつれ始め、ますます絡まってゆく「プロセス」を示すものだ。絡まってしまった糸の玉を一本一本ほどいて元の状態に戻すことはできないが、少なくともどのような糸が絡まっているのかは示すことができるだろう。」(8-9頁)
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