オムロちゃん@ゆっくりレモン "成瀬は天下を取りにいく" 2026年6月18日

成瀬は天下を取りにいく
女の子が主人公の物語は、昔からあまり自分に合わない気がして、どこか避けてきたところがある。それでも今回は少し踏み込んで読んでみることにした。 読み始めの印象は、かなり狙いに来ている作品だな、というものだった。完全無欠に見える変人の成瀬と、そのそばにいる島崎。自分の世代だと、こういう女主人公の変人キャラには、どうしても涼宮ハルヒの影がちらつく。 ただ、読み進めていくと、成瀬はそういうキャラクターとは少し違って見えてきた。強引に周囲を振り回すというよりも、もっと真っ直ぐで、ピュアなものを持っている人物だった。 最初は、島崎が成瀬を観察していく物語なのだと思っていた。成瀬という変わった人物を、常識側にいる島崎が記録していくような構図に見えたからだ。 けれど、だんだん印象が変わっていく。成瀬が変なのはもちろんとして、島崎もかなり変なのである。成瀬だけが特別なのではなく、島崎もまた、十分に変わった人物だった。 自分にとって、この作品を読み進める推進力になっていたのは、成瀬だけではなかった。成瀬の行動を島崎がどう受け止めるのか。島崎がどんな距離で成瀬のそばにいるのか。そこに面白さがあった。 だから途中で、別の人たちのサイドエピソードのような話が続いたときは、正直あまり乗れなかった。作品全体としては必要な章なのかもしれないが、自分が読みたかったのは、やはり成瀬と島崎の話だったのだと思う。 そのぶん、終盤で再び二人の話に戻ってきたとき、一気に面白く感じた。 終盤で描かれるのは、成瀬のスランプと成長だった。それまでの成瀬は、何をやっても自分のペースを崩さない、無敵の変人のように見えていた。けれど、そこで見えてくる迷いは、世界を揺るがすような大事件ではなく、年齢相応の親友との些細な関係性だった。 成瀬は、なんでも見切りをつけるのが早い。そこは彼女の天才肌らしさでもあるのだと思う。無理だと思えば次へ行く。その軽やかさが、成瀬という人物の魅力でもあった。 ただ、島崎との関係においては、そこで終わらせなかった。いつものように簡単に見切りをつけるのではなく、少しだけ泥臭くなった。 その成瀬に、好感を覚えた。 最初と最後は特に良かった。読み始めは、まんがタイムきららくらいの軽いテンションで読んでいたけれど、最終的には思っていた以上にしっかり着地する作品だった。 長編を読んだ後の箸休めとしてもちょうどよく、軽く読めるのに、最後にはちゃんと残るものがある。 成瀬、島崎共に、とても魅力的なキャラクターだと思った。続編ももちろん買うよ。
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