りら "見えるか保己一" 2026年6月18日

りら
りら
@AnneLilas
2026年6月18日
見えるか保己一
見えるか保己一
蝉谷めぐ実
第39回山本周五郎賞受賞作、第175回(2026年上半期)直木賞候補作。 初めて読む蟬谷めぐ実作品。 日本史の新書を読むようになって『群書類従』の字面は何となく目にしたことがあるかな程度で、それを編纂した塙保己一のことも検校のことも微塵も知らないまま読んだ。 保己一の偉業を主眼とした伝記的なアプローチではなく、彼を取り巻く家族や弟子、縁のあった人々との関係性を、失明前の幼少期から晩年近くまでの年月を飛び飛びで描いた作品。 記憶力が驚異的にずば抜けている点と、盲人だからこそ燃やした学問への執念以外に、長大な叢書の編纂に至るどんな適性が保己一にあったのかは、正直よくわからなかった。 見えない者にも見える世界はあるし、見える者と見えない者の双方にお互い見えていないものがあり、わかりあうこともない。 学問で身を立てることしか頭にない保己一自身よりも、いっときは保己一の身近に過ごしながらも離れずにはいられなかった元妻や元弟子の凡人なりの悲哀や怨念が後に残る。妻に関しては今でいうカッサンドラ症候群なのでは。 全編聴き終わってみると、やはりてるちゃんの存在の切なさが際立ってくる。盲人の天才に生涯嫉妬し続けるかつての神童。 保己一の目の中で光り輝いていたてるちゃんには、いい声の『太平記』読みでいてほしかった。 オーディブル2.0倍速。
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