ジクロロ "氷上旅日記" 2026年6月19日

ジクロロ
ジクロロ
@jirowcrew
2026年6月19日
氷上旅日記
氷上旅日記
ヴェルナー・ヘルツォーク,
藤川芳朗
霧のなかでの神話の丘。砂糖大根を積み上げたもので、農道に沿ってつづいている。しわがれた声の犬。砂糖大根を一切れきりとって口にしたとき、ものごとの序列について考える。シロップにはいつでも上の方にたくさん泡があったな、と思う、砂糖大根の味がそんなことを思い出させたのだ。ホルツハウゼン。広い道路に出る。最初の農家の中庭に、何か収穫したものにビニールの防水シートがかけられ、重しに古タイヤがのせてある。歩いていると、やたらと捨てられたものが目につく。 (一九七四年十一月二十四日(日曜日)) ト書き的コマ切れ描写、いかにも映画監督。 句点がカット位置、読点は感傷のプロット。 「砂糖大根を一切れきりとって口にしたとき、ものごとの序列について考える。」 感覚と思考の反復。 歩きながらの描写だからこそ、世界の中心は自分の側に引き寄せられる。 「ものごとの序列」とは、気まぐれに選ぶ道そのもの、歩いているからこそ序列と呼べるものども。 「歩いていると、やたらと捨てられたものが目につく。」 それらは歩いている本人のピースであり、 それらを拾(ひら)いゆくことが彼の使命。 「これが映画だったら、何もかも本当だと信じるだろうに。」 (一九七四年十一月二十三日(土曜日)) 歩くことによるつながることのない地点どうしの縫合、それが「映画」なのかもしれない。
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