ON READING "言葉と出来事" 2026年6月19日

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2026年6月19日
言葉と出来事
言葉と出来事
阿部大樹
精神科医として働きながら、学術書の翻訳家としても活躍する阿部大樹さんの日記集。本書には、お子さんが初めて一人で本を読めるようになるまでの約一年間が記録されています。 言葉を獲得し、世界を広げていく子どもの変化と、それを見つめる親の思索。 印象的なのは、「何が起きたか」よりも、「そのとき何を考え、何を感じたか」に重心が置かれていること。出来事は覚えていても、そのときの思いや考えは驚くほど簡単に失われてしまいます。本書は子育ての記録であると同時に、一人の人間の思考の軌跡を残した貴重な日記でもあります。 なかでも心に残るのは、お子さんとのやりとりです。言葉を覚えたばかりの子どもの表現は、驚くほど自由で伸びやか。私たちは円滑にコミュニケーションをとるために言葉の使い方を共有していきますが、その過程で視野や考え方まで狭めてしまっているのかもしれない――そんなことを考えさせられました。 哲学者・古田徹也さんとの対談「書くことについて」の付録冊子も封入。その人の、その瞬間にしか生まれえなかった言葉や思いが、たとえわずかだとしても宿る(宿ってしまう)のが日記という形式。明日には忘れてしまうような小さな出来事を言葉として残すこと。そのかけがえのなさをあらためて感じさせてくれる一冊です。
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