
和月
@wanotsuki
2026年6月19日
読み終わった
大島の章から俄然引き込まれる。面白かった!
棋士の世界で苦悩する芝と、棋士になる道を諦めて弁護士として働く大島。別のベクトルで苦しむ2人のごちゃ混ぜになった感情と共に、奨励会や将棋の世界の壮絶さが描かれる。
前半はうだつが上がらない芝のプロ棋士としての生活が描かれる。将棋界にあまり触れたことがない身としては、ギリギリのラインで努力しつつぬるっと現実逃避する芝にそれでいいのか……!と思ってしまう。
しかし、棋士である限りほぼ永久的に将棋と向き合い続けなければならない世界というのは、こちら側からは想像を絶する程の茨道なのだとも感じた。
芝視点の時は現実と夢の狭間が曖昧だったり、感情が流動的な文章で表されていて、純文学寄りの作品なのかな?と感じたけど、大島視点はかなり大衆文学的。かなり読みやすく、弁護士の仕事の部分は別の物語のようで楽しめた。
芝の章では、良い友人であり割り切った考え方ができる大人として登場した大島が、今も尚プロ棋士を諦めたことを引き摺り、嫉妬と憧憬と憐憫の入り交じった眼差しで芝と相対している所がかなり良かった。タイトルが双方向に伏線回収されるのも秀逸。
ラストは意外にも軽やかというか、希望がある気がして好ましい。文庫化を機に書き下ろしとかあったりしないかな。もう少し2人の会話が読みたいような気がする反面、彼らの絶妙なヒリつきはここまでで十分満足な気もする。
とにかく、表紙のパンチ力を裏切らない火力の高い作品だった!



