
本屋lighthouse
@books-lighthouse
2026年6月20日
戦争×書物
アンドルー・ペティグリー,
五十嵐加奈子
読み始めた
『重力と恩寵』は断片的な記述のかたまりなので読み方もそのようにするのがあっていると判断し、ぐわっと読んでみたい物理的大物(500ページ超)であるこちらに手をつけてみる。
主要テーマとは別のものかもしれないが、南北戦争時に北軍兵士のひとりが言ったとされる「我々の国家、我々の国民性が消滅するのなら、いっそ我々全員が死に絶えてしまったほうがいい。このまま生き延びて、共和制を試み失敗した者たちと指差され、後世まで物笑いの種となるのを見たくはない」(p.80)という心理状態が気になった。おそらくこの感覚は、いま「戦争になってもよい」とどんな形や強度であれ考えている人のなかにあるものなのではないだろうか。国家という、本来なら自分自身と同一化できやしない存在への同一化による虚しい安心感。そしてどうせ失敗してしまうのなら試行錯誤もしないほうがよい、という失敗への恐怖。
「世論の動向、さらにはその根底にある特定の国または社会集団の姿勢や前提は、長い時間をかけて構築されるもの」(p.82)である以上、2020年代の日本の空気がどのようにして構築されてきたのかを考える必要があるし、同時に、現在から見た「長い時間」ののちにある未来の社会の空気を作る要素のひとつである本、そして本屋の責任を考える。すぐには結果が出ない、出たとしても効果測定ができないものにこそ、時間をかけて向き合い続ける必要があるのだろう。


