
にょ
@Yxodrei
2025年3月25日

硝子戸の中
夏目漱石
読み終わった
かつて読んだ
漱石がこれまでの人生のあれやこれやを回想する随筆集。
その筆致には、どこか優しさがあり、穏やかだが、淡く滲む倦怠がある。人生に対する不快感と疲労、それでも生きるしかないという諦観が作品全体を静かな通奏低音のように包んでいる。
表題にある「硝子戸」は、外界と内面の間にある透明な境界だ。日常の出来事、人の姿、世間のざわめき……漱石はそれらを硝子戸越しから眺めつつ、丁寧にすくい上げてゆく。
自分を含むすべてを、遠くから静かに微笑むような態度。これが「則天去私」なのかな。好きだな。『明暗』『道草』あたりも読んでみようかしら。
筆の置き方が好き。以下引用
『家も心もひっそりとしたうちに、私は硝子戸を開け放って、静かな春の光に包まれながら、恍惚とこの稿を書き終るのである。そうした後で、私はちょっと肱を曲げて、この縁側に一眠り眠るつもりである。』




