本屋lighthouse "戦争×書物" 2026年6月21日

戦争×書物
戦争×書物
アンドルー・ペティグリー,
五十嵐加奈子
ネラのマス・オブザべーション日記で最も注目すべきは、大量の言葉の海のなかに読書についての記録がほとんど見当たらない点だ。なぜ注目すべきなのかというと、戦争が勃発するまでネラは熱心な読書家だったからだ。(中略)。一九四二年に実施された戦時中の読書に関する大規模な世情調査では、四〇パーセントもの人が戦時中は読書量が減ったと答え、そのうちの多くが読書量はかなり減った、あるいは全く読まなかったと回答していた。(p.222-223) 第二次大戦中、兵士を筆頭に戦争に深くかかわる生活を送っていた者らにとって本は貴重かつ主要な娯楽となったが、いわゆる銃後の民として戦時下における「日常生活」を送っていた者らは本を読めなくなっていた。これは戦中に限った話ではないだろう。戦前から徐々に生じていく現象として捉えるのなら、このところの出版業界の苦境もこの流れのなかにあると考えても筋が通る。 ネラの日記“Nella Last's War”は1981年に刊行され、2006年に再販もされている。翻訳権が切れてたら自前刊行してしまおうかと思ったけど、まだ権利者がいるようなのでどこかの出版社で出してくれないだろうか。
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ケルナーの日記が無事に後世に残ったのは、彼がラウバッハの小さな町に住んでいたこともあるだろう。たとえ日記を書く危険を冒した人がほかにいたとしても、一九四三年から四五年にかけての壊滅的な空襲によって、個人の持ち物のほとんどは失われてしまったからだ。人々が文章にするのをためらったことと戦災という二つの理由から、ドイツ国内の本の生産と消費に関する情報源は個人の思い出よりも公的な記録のほうが多い。(中略)。しかし普通の従順な市民が表にあらわれるのは、その人が規範を超えたときだけだ。(p.248)
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