W7Ed
@4nTeG00N
2026年6月21日
消え失せた密画
エーリヒ・ケストナー,
小松太郎
買った
読み終わった
ケストナーの楽しく明るいミステリー。主人公の肉屋のおじさんキュルツをはじめ、誰もがどこかしらとぼけているのがとことん楽しい。ミステリーとしても度重なるどんでん返しが謎解きの期待を高めてくれ、読後のすっきり感もよかった。
あとがきが素晴らしかった。こののほほんとした作品は、ヒトラー政権の膝下で生み出されている。「抵抗の作家」ケストナーを真正面から考えていなかったことを教えられた。ただ、楽しく読んでいても、文章の中に時々さりげなく現れるシビアなひと言にはハッと立ち止まってしまっていた。ケストナーの抵抗と怒りがそうさせたのかもしれない。
長く読み継がれる児童文学には、明るく、楽しく、自由な光の力がある。どの時代の子どもたちが読んでも、間違いなく楽しく心を豊かにしてくれる。ただ、大人がこれらの本を子どもの未来を照らす本としてこれからも手渡していきたいと願うならば、光の面だけの理解ではだめなのだ。作者が見ただろう苦痛、不安、恐怖、悲しみなどの、闇の重層を想像することを常に忘れないでいようとおもう。

