tar_a_butter "台湾漫遊鉄道のふたり" 2026年6月22日

台湾漫遊鉄道のふたり
台湾漫遊鉄道のふたり
三浦裕子,
楊双子
見慣れない台湾語の食材や地名に翻弄されながら読み終わり。 後書きを読んで、なるほど、向こうではノンフィクションの顔をして出版されたんですね。 読み味がとても軽いなと思いながら読み進めたので、アニメ・ZINE系出身なのも納得。 千鶴が手元を離れるたびに、そして戻ってくるたびに涙が出そうになった。私もまた、千鶴子と同じように千鶴に心を掴まれていたのだ。 短いスパンでこの波が何度も訪れるので、途中からは作為的に心を揺さぶられているような感覚があったが、千鶴の生い立ち(名探偵パート)を読んで、それさえも千鶴の一部だと感じて許せた。 美島が千鶴子の傲慢さについて指摘するシーンがとても好き。 青山千鶴子という人間のことは可愛らしいと思いつつ、途中でも千鶴に指摘されていた、美島と千鶴への対応の違いなど気になるところは多々あったので、ここをはっきりさせるのが美島だったのは良かったな。 とはいえ、千鶴子は美島にもう少し優しくしてもいいと思う! 千鶴が異常なだけで、美島が悪いわけではないのに……とストレスを感じる部分が時々あった。 私は千鶴のことを途中までずっと誤解しながら読んでいた。 「運がいい方」という諦めを自分に刷り込んで、誰かが強く引っ張りあげないともう井戸の底から出られなくなってしまっている人間なのだと思い込んでいた。 しかしそれは違っていて、自分が青山千鶴子と同じ類の傲慢さを持って千鶴(ひいては作中で描写される本島人・台湾という土地)をジャッジしていたのだと気づいた時に、自分がこの作品を読む意義を強く感じた。 "愛で乗り越えることが困難なものであればあるほど、逆に愛に近いものだと思っています。" 私は物語に、作者の言う通りこの壁を乗り越える愛を期待しており、その意味では一度ひどく辛い気持ちになった。 作者の発言にもあるように、2人に立ちはだかる社会的な障壁を愛でどうにかすると言うことはほとんど不可能に思えていたからこそ期待してしまったのだ。 しかし、それでも愛を描くことを放棄していないと信じられる物語を読めたことに感謝しています。
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