
読谷 文
@fumi_yomitani
2026年6月23日
雪の如く山の如く
張天翼,
濱田麻矢
読み終わった
現代の中国で異なる漢字の「リーリー」という名を持つ6人の女性を描いた短篇集。
最初の短篇「ただ座りたいだけなのに」は、90年代の旧正月に「座席なし」の切符で帰省する大学生・詹立立(ジャン・リーリー)の物語だ。
大混雑の極めて劣悪な環境のなか、まさに「掃き溜めに鶴」のような人物との出会いと交流が描かれるのだが、最後の最後で背筋が凍る。この本はこういう本です、と宣告されたようで、暗澹たる気分になる。
「雪山」は、友人の結婚式に出席する彼氏に同行した巫童(ウー・トン) と、旧知のおばさんの姜麗麗(ジアン・リーリー)が、互いに全く縁のない地方都市で偶然にも再会する物語だ。書かれている期間はたった2日足らずなのに、2人の過去の関係が次第に明かされてゆくにつれて、数十年の重みを共に過ごしてきた感覚になる。それは決して楽しいだけのものではなかった。
極めつけは最後の「年始の挨拶」である。
年始の挨拶に恩師を訪ねる両親と娘の話だが、始めから不穏な空気が漂いまくっている中、執拗に家族の背景の描写が積み重ねられる。最後に一気に畳み掛けられる予想外の事態に気絶させられる。かなり胸の悪い悪夢だった。
✴︎
訳者解説を読むと、より細かな背景と補足とが丁寧に書かれていて、なんというか改めて絶望みが増すのだった。解説にある通り、世界的ベストセラー「82年生まれ、キム・ジヨン」に通じる物語で、女性が生きていく上で見せられる世界がこれでもかと盛り込まれていて、どこの国でも同じだよな、と翻訳文学を読むにつけいつも感じさせられる。
生きていく上でしばしば感じさせられる苦味走ったものが繊細に描かれていて、本当に見事な文章だった。作者と訳者に敬服する。


