
doji
@doji_asgp
2026年6月22日
イン・ザ・メガチャーチ
朝井リョウ
読み終わった
いまの日本の空気とイシューをすべて書いてやるという気迫を感じて、忠実に切り取ることにこれ以上ないほど成功しているのだろうなと思った。推し活をしたことがないので完全な感情移入はできなかったものの、ここで描かれている男性として生まれて歳をとっていくことの孤独や、会社員としての安定を手にしなかった不安はどうしたってもわかるし、登場人物たちが視野狭窄によってどんどん歩みを進めてしまうことに胸が痛くなった。
モノローグと他者のセリフが同時進行に展開していくのはこの作家の得意技というか、テキストだからこそできることであり、複数のシーンを編集でつなぐ映画のような効果を生んでいると思う。同時に、たぶんこれはぼくの問題だろうけれど、おなじ推し活を描いた『推し、燃ゆ』が題材との距離を突き抜けてこちらに侵入してきたのに対して、なぜだか本書はそこまで感じいることはなかった(なぜだかと書きつつ、それはぼくが翻訳小説ばっかり読んでいてその影響下にある文体に心地よさを感じるから、というのが大きいんだと思う)。
読む終えて胸の中心に深い悲しみが残る。陰謀論にはまることも、推し活にお金と時間を溶かすこともできず、かといって橋本や国見のようにそれらを利用する側にもいない。日本に生まれて生きているのに、ずいぶんとそのことから距離をとって生きてきてしまったのかもしれないなと、言いようもない孤独も感じた。


