伍エ捫 "きみはポラリス" 2026年7月5日

伍エ捫
伍エ捫
@Goemon_VS
2026年7月5日
きみはポラリス
きみはポラリス
三浦しをん
お初の作家さん!読むーー!! 初っ端厳しい寒さを「すべてがつるりと滅菌されそうなほど」と今まで見たことない角度から描写されていて、すでに楽しい。 色々な恋愛模様が見られて面白かった。どれもキャラクターの心情描写が繊細に描かれていて、万華鏡を覗いているようだった。 最初の『永遠に完成しない二通の手紙』が一番胸に沁みた。男性が訪ねてきたから部屋の主は女性かなと思ったら、同じ男性で驚いた。 寺島と岡田と掛け合い漫才大好き。「ハエみたいにいともたやすく捕獲されやがって」とか「『小生』とでもしておけば」とか、とにかく楽しくてすごい笑った。小説でここまで笑ったの初めてかもしれない。 「寺島の無意識の残酷さ」のところでもしやと思い、その後の「俺がずっと一緒にいるよ」であーってなった。寺島の髪の先についた煙草の灰を優しく払う仕草に、岡田の気持ちが凝縮されている気がする。 数日掛けて読んでいたら、最後にもう一回この2人が出てきて嬉しかった。 友達として好いていた頃は、自然と相手の悲しみに共鳴できていたのに、別の感情が芽生えたことで「自分だけがあの人の悲しみを知っている」という独占欲へと変わってしまう、その気持ちの移ろいはよくわかる。すごく共感した。 次点で『骨片』が沁みた。 卑下している朱鷺子に対して先生が、「そんなことないよ」って真っ向から宥めるのではなく、まず「自分もそうだよ」って同じ目線に立っていて、素敵な人柄だなと思った。目線の高さが同じだと、言葉はよく染み渡る。 先生の骨が入った容器が転がった音で、先生が者ではなく物になってしまったことが強調されていて切なかった。 朱鷺子も祖母も、互いにやりたいことを成し得なかったという未練を纏っている点は同じだけれど、その未練に対するスタンスが対照的で印象深かった。 『春田の毎日』も好き。 最初は普通に読んでいて、名付けのシーンで「ん?」と思ってこれまでの2人の会話を見返したら、会話しているようでしていなかったから察した。こういう、特殊な視点の話好き。 ワイルドな恋愛観を「ホルモンっぽい」と表したり、寝不足の顔を「煙草で燻製した寝不足の野犬」と例えたり、洒落の効いた比喩が素敵だった。 あと、「人の心は鎖に繋げない」ということを、「将来の見通しなど紙にはいくらでも書けるけれど、ひとの心に書き記すことはできない」と形容されていて、そういう表し方もあるのかと感銘を受けた。 どのお話もすごく素敵だった。自分にしては珍しく、未読の段階で三浦さんの御本を他にも購入したけど、ナイス自分。
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