いちのべ "ファイア・ドーム 下" 2026年6月22日

いちのべ
いちのべ
@ichinobe3
2026年6月22日
ファイア・ドーム 下
面白かった〜! 犯人/真相は比較的わかりやすくサプライズ感は薄かったが、光汰朗誘拐のホワイダニットには驚愕したし、「この先がどのように描かれるのか」「登場人物はどう行動するのか」が気になって一気読みだった。 特に光汰郎、速斗、一樹、三人の子どもたちがそれぞれ個性と頭の良さと思いやりがあって、めいっぱい思い入れを強めてしまった……上巻が終わった時点で「出来ることなら誰ひとり酷い目に遭わないでくれ〜!」と祈るような気持ちで下巻をめくった。速斗が光汰朗の声に気づいたシーンでは、泣きそうになった。 > 「おじいちゃんの、大事な、子どものことだから聞けない」(p132) 光汰朗のこの言葉も、彼の聡明さと優しさが本当に切なくて悲しくて。 > 噂は軽薄な娯楽だ。一時興じて、あとは忘れる。消費して捨てる。その時にどれだけ熱くなったとしても。意図的に責任から逃げるよりも、ある意味では罪深く、だからこそ恐ろしい。(p308) 著者の辻村深月さんと澤村伊智さんの対談で、本作と『ざんどぅまの影』が「噂」という共通するテーマを扱っていると語られていて興味を持って。読み終えて、本当に読み比べるのが面白い2作だったなと感じる。どちらもきわめて現代的で、普遍的な、「噂」という人間の業が描かれている。 > 心配し、気遣う気持ちとともに、噂が広がる一因となるのはまぎれもなく私たちの興味と好奇心だ。悪意だという感覚すらなく、わかりやすい真実を求めて、地元だからと事件に前のめりになる。(p106) 『ファイア・ドーム』における「噂」は、善意や悪意や正義感より、軽薄な興味と好奇心によって広まっていて、その点がよりモヤモヤできてよかった。興味や好奇心という特性があるからこそ、人間の社会は発展したのかなとも思えるので……。 また、以下のような被害者、加害者家族の言葉が、非常に重く響いた。 > うめきとともに声を吐き出すと、自分が、この可能性を実はまったく想像もしていなかったことを初めて認められた。光汰朗が戻ってくる未来。孫が生きている未来を、あんなにも山を駆けずり回り、捜しながら、忠治はまったく考えることができずにいた。望みは捨てない、という気持ちは、自分が自分についた大噓だ。忠治は諦めていた。なぜなら知っていたからだ。子どもはある日、急に殺されるのだということを。(p34) > 「どうか、記事にはしないでほしい。もし掲載されたら猛抗議する。──あんたたちにとっては単なる事件の一つにしかすぎないかもしれないけど、こっちはこれが人生なんだ! こっちは生きてるんだよ!!」(p87)
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