ishiguro_reads "世界99 上" 2026年6月25日

世界99 上
世界99 上
村田沙耶香
村田沙耶香はこの本でノーベル文学賞を取るかもしれない。近くの席の会話が漏れ聞こえてきてから、ずっと気になっていた。 読み始めてすぐに、フェミニズムと分人と世界の分断を一つの物語のなかに描いている、この本の凄みに飲まれた。人の感情を持ち合わせないがトレースすることはできる主人公が、より人の心の機微を捉えているのは、コンビニ人間に通ずる秀逸な設定だ。SFの形でこの世界とは少し違う秩序にある世界を語りながら、この世界にある不条理を鮮明に描くさまは、読者にスペキュラティブデザインのような思考の軌跡を追体験させる。 性的な表現、グロ表現、不条理、やりきれなさなど、全くもって万人にオススメはできないのだけれど、確かにこれは一つの世界の見方を書き残してしまっていて、時代や国が違えば禁書になりえるくらいのインパクトを持っている。下巻をどう締め括るのだろうか。
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