
風邪ひき
@damdamdan
2026年6月26日
55歳からのハローライフ
村上龍
読み終わった
素晴らしかった。
タイトルが『13歳のハローワーク』と似てるせいで、長い間、これが小説だと知らなかった。
村上龍の本は半数くらいは読んでいたのに。
90年代後半からゼロ年代頭くらいまでの村上龍は、社会からはみ出した人間を主人公に「この国は経済的に豊かだとされてるのに希望というものがない」ということを何度も書いていたと思う。
その後、日本の経済が落ち込んでからは、『空港にて』あたりから、普通の人を主人公に「希望とは何か」を真剣に考えているように思う。
それは馴れ合いとか、甘えとは真逆の、個人にとっての代替えの無い、生きる希望。
本作も『空港にて』と似たスタンスの短編集で、各物語の冒頭では、60代を間近に迎える主人公たちは、その歳になってもまだ、自分の欲望がよくわかっていない。そんな彼らが生命的・精神的な飢餓を感じるに至る物語。
自分も近い年齢なので、そのリアルな描写にドキッとしたが、最近よく目にする「世の中はこんな残酷だ」と穴に落ちる人を読者に観察させる小説とは、根っこが違うと思った。穴に落ちる人をみんなで観る系のコンテンツは、広い意味でポルノだと思ってしまう。だが、村上龍の作品は全く違っている。現実を認識した者だけが、そこから這い上がろうとする意識が芽生える。今いる場所から勇気を出して外に出てみた者だけが、さっきまで自分のいた場所のかけがえの無さに気付ける。
その様が描かれているから、お涙頂戴や露悪系神目線とは違う、真摯で深い感動があった。







