Autoishk "救われた舌" 2025年3月26日

Autoishk
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@nunc_stans
2025年3月26日
救われた舌
救われた舌
エリアス・カネッティ,
岩田行一
「私は母がこの最後の機会に事の真相をその目に映じた通りに述べたことを知っている。私たちの間には長く苦しい闘いがあったし、彼女がすんでの事に私を永久に遠ざけそうになったことも一再にとどまらなかった。しかし今は自分はお前がお前の自由のために行ってきた闘いを理解する、今はこの自由に対するお前の権利を認める、この闘いが自分にもたらした不幸など眼中にない、と彼女は言った。自分が読んだこの本[=カネッティの最初の作品である『眩暈』]は自分の分身だ、自分はお前のうちに自分の姿を認めるし、お前が描いた通りの人びとをつねに見てきた、同じことを、全く同じことを、できたら自分で書いてみたかった、と。自分が済まぬと思うのはそれだけではない、自分はお前に頭を下げる、お前を旧に倍して自分の息子と認める、お前は自分が最もあらまほしと思ってきたものになってくれた、と。」(p.93)
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