
しんどうこころ
@and_gt_pf
2026年6月27日

息
トーマス・ベルンハルト,
今井敦
読み終わった
自伝五部作の三作目。著者十八歳頃の出来事を綴った作品である。
シリーズを通して改行の一切ない怒涛のテクスト。最初は困惑したが、このリズムがもはや心地よい。
重篤患者が収容される、死が約束された病室。そこで自己の死、他者の死と対峙する時間が描かれる。
威厳などまるでない、赤裸々な死。
その姿を前にして、人には十人十色の生き方があるように、十人十色の死に方があることを知る。
切迫感に満ちた描写は、生の意味、生のはかなさ、そして死の恐ろしさを読者に強く問いかける。胸が苦しい。これは精神が元気なときに読むべき作品だ。
もっとも印象に残ったのは、敬愛する祖父が語る「わしら二人には、将来を自分のものにしようという最高に強い意志がある」という言葉である。
死を目前にすることで、人間の意思はかつてないほど輪郭を強める。これこそ哲学である。哲学というのは机上の空論ではなく、まさにこうした生の中にこそ息づいているのであろう。
また療養中、ベルンハルトは膨大な読書を重ねており、それが文学へ進む大きな契機となったこともうかがえる。




