一世 "NEXUS 情報の人類史 上" 2025年3月26日

一世
一世
@seedo81
2025年3月26日
NEXUS 情報の人類史 上
NEXUS 情報の人類史 上
ユヴァル・ノア・ハラリ,
柴田裕之
読了。ユヴァル・ノア・ハラリ氏の6年ぶりの著作。情報とは「人と人を繋ぐもの(NEXUS)」である、という前提を元に、最新のAI動向について警鐘を鳴らすような刺激的な内容でした。 上巻では歴史学者としての視点から、情報が国家形成にどのように影響を与えてきたか を掘り下げています。 例えば、古代エジプトの文書管理や中世ヨーロッパの教会ネットワークなど、情報がどのように国家や権力の形成を支えたか を具体例とともに解説しており、人類史を「情報史」として再解釈するアプローチが印象的でした。情報そのものが人類社会の形を決定づけてきたという観点は、ハラリ氏ならではの大胆な発想です。 下巻では、AIの進化とそれを使った各国の管理・監視体制の現状についての警告 が中心となっています。 特に、「AIがArtificial(人工)ではなくAlien(異なる)Intelligenceになりつつある」 という指摘には背筋が凍る思いがしました。AIが人間の意思を超えて独自に判断し、人類の社会構造に異質な影響を与えつつある現状を、冷徹に描き出しています。 この「異質な知性」が、人々の生活をより豊かにする可能性を秘めている一方で、その制御を失った場合には甚大なリスクが伴うというのは、現代社会が直面している最も重要なテーマの一つです。 特に印象に残ったのは、イランにおけるAIによるヒジャブ着用管理の実情 についての記述です。日本のメディアではほとんど取り上げられない話題ですが、政府がAIを使って市民の服装を監視し、宗教的規範を強制する現状 は、技術の利用がいかに容易に個人の自由を侵害するかを示しており、恐怖を覚えました。 「人間が宗教や貨幣を信じて社会を形成してきたように、AIが人のコミュニケーションに過度に関与し、管理する社会が到来しつつある」 というハラリ氏の警告が届くことなく、現実は加速度的に変わりつつあります。 これからの未来を考えるにあたって必読とも言える一冊だと思います(ハラリ氏の著作を読み慣れていない人にとってはやや難解な部分もあるかもしれませんが)。 ● NEXUS 情報の人類史 上: 人間のネットワーク/下: AI革命(ユヴァル・ノア・ハラリ、2025年、河出書房新社)
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