
いちのべ
@ichinobe3
2026年6月28日
デ・ラ・メア ショートセレクション 運命の時計
デ・ラ・メア,
ヨシタケシンスケ,
金原瑞人
早速、図書館で借りてきて「アーモンドの木」を読む。
> そういうとジェインは立ち上がって、縦長の戸棚の細長いとびらを開けると、トランプをしている人たちをみてから身をかがめた。ぼくはそのときのお菓子をいまでもよく覚えているんだ。ハチの巣の型を押した小さな楕円形のショートブレッド、カスタード、ミンスパイ。それに、キャンディのつまった大きなガラス瓶。(p20)
この描写に『英米文学のわからない言葉』を思い出してニッコリ(この後、ヨークシャー・プディングが好きだという話も出てくる!)(聖バレンタインのご馳走も)。
不機嫌を撒き散らす父親、それに振り回される母親、父親と親しくなる若い娘……の関係がこどもの目線で語られる。家の周囲や自然の描写のうつくしさと、こどもの目線だからこそ湿度が低く語られる人間関係のいざこざ。
> いまでも胸を躍らせて願うことがある。あの頃のあどけない目で夕暮れの筋雲をながめてみたい、緑の小枝にとまった黄色のアオジがチチッ、チチッと鳴く声をきいてみたいってね。あの古い家の部屋はすべてよく覚えている。急な階段、リンゴのにおいのするひんやりした食料貯蔵庫、石敷きの流し場、井戸、ぼくが飼っていた長いこと生きていたカラス、風がさびしげな音を立てて吹き過ぎるニレの木立。 だが、何よりよく覚えているのは、言葉にできないほど素晴らしいヒースの原野だ。 所々にハリエニシダが生えていて、陽光に満たされたどこまでも高い空の下、あそこは朝にはあらゆる野鳥が群れ集う。(p9)
そして(読者の視点でいえば)悲劇が訪れるのだが、こどもの目線からは悲哀が薄いのも面白いし、ラストそんな着地!?という軽い裏切りに遭う。この本は図書館では児童書コーナーにあって、子どものうちに出会えていたら「どういうオチなの?」「ジェインを家に呼ばなければよかったと思ったのは何でだろう」とモヤモヤが今より残ってただろうなあと思う。
> 「この子があなたを憎むようにしてやる」母はだるそうな低い声で強くいった。(p37)
最初読んでいた時、この子=こども時代の「伯爵」だと思っていたけれど、お腹の中の子のことなのかなぁ……。