
みー
@mi_no_novel
2026年6月28日

多類婚姻譚
凪良ゆう
読み終わった
@ 自宅
直木賞候補作。
前作に続き、素敵な装丁に心を惹かれて購入🌿
ちょうど私のライフステージと重なる部分が多くて、良かった。
人には人の「結婚」の形があり、幸せの形がある。
周りと比べることをせずに、自分だけの幸せを追求していくことが大切だと改めて気付かされた。
私自身も、最近自分と周りのライフステージの差を感じてしまうことが多かったけれど、この小説に出てくる主人公たちのように自分らしく生きたいと思った🌼
「Thank you for your understanding」
家族の期待に応え、ついに恋人と帰省する決意を固めた華。
「Beautiful Dreamer」
結婚したい。ありふれた夢のはずなのに、東京ではこんなにも遠い。
「小鳥たち」
離婚して、実家の書店を継いだ一葉。そこに偶然、初恋の人がやって来て──。
「Position Talk」
入籍を目前にした男女。性差を越え、個としてわかり合える日は来るのか。
「C'est la vie」
仕事も恋も、魂を分けあった二人。だが、夢のような時間にはいつか終わりが来る。
p111
そういえば、この入浴剤は産休を取っている社員さんからの挨拶品だった。それとは別に部署全体に「産休をいただきます』という妊婦のイラストが描かれた産休クッキーも配られた。休む理由はみんなわかっているのに産休産休ってこれみよがしになんなの、と女性の社員さんがあとで給湯室で泣き出して大変だったそうだ。普段は穏やかな人なので驚いたけれど、もうずいぶんと長い間、不妊治療をしているとあとでわかった。あのときうっすらと寒気がした。結婚しても勝負は終わらない。わたしたちは、一体あといくつハードルを飛び越えなければならないのか。
p193
「うん。新婚旅行くらいはお互いにのんびりしよう」
「結婚っていろいろ考えること多いよね」
朱里の言うとおりだった。式は省けても住むところは省けない。新居は会社に近いマンションを借り、時機を見てマイホームを買う。子供の教育を考えると都内一択。五十歳までに返済を終えたいのでペアローンを組み、並行して妊活し、出産後朱里は迅速に仕事復帰をする。育児は親にも積極的に頼る予定だ。都内に実家がある朱里の母親に今からお願いをしている。ぼくのほうは実家が山梨で、母親はすでに他界して父と姉のみなので頼りにはできない。
ありふれた人生設計だと思う。けれどそのありふれた人生を外れずに生きていくことの困難さといったらどうだろう。互いにフルタイムで働き、子供を作り、高騰するばかりの都内にマイホームを買い、肩じられないほど高額な塾に子供を通わせて受験をさせ、自身のキャリアも積み上げ、住宅ローンと教育費を払い終えたあと、やっと自分たちの老後資金作りに本腰を入れる。そのころにはあと数年で定年退職の年齢に──。
なっていれば大成功だろうな。
長い人生、大病をすることもあるだろう。どちらかが働けなくなればマイホームのローン返済計画も破綻する。子供は優秀であってほしいが健康であればそれでいい、などと考えていても、そもそも子供ができるかどうかわからない。できなければそれでも構わないが、人生百年と言われる今の時代、残りの数十年間、子供というかすがいなしで愛情だけを頼りに一度も別の誰かに心惹かれずにいられるものだろうか。事と次第によっては離婚もありうるし、そのときはマイホームを売って財産を分けることになるだろう。収入の多くを費やしたマイホームを売るとき、なんのためにがんばってきたのかと虚しくなりはしないか。さらに夫婦が内務でも親の介護問題が出てくる。結婚はエンジンが二馬力になると同時に、トラブルも倍に増えるシステムだ。考えるほどに疑問が浮かぶ。



