
やん
@grilledyangyang
2026年6月28日
ババヤガの夜
王谷晶
読み終わった
叙述トリックにまんまとしてやられた!(笑)こんなに「そうきたか!」と唸ったのは、『ハサミ男』以来かも。
作品上必要なもの以外を限界まで削ぎ落とした簡潔な筆致が生み出す疾走感。それでいて、依子と尚子の熱や情感はしっかりと掘り下げられており、繊細でありながら重いストレートを真正面から喰らったような力強さに引き込まれる。短いながらも、隅々まで緻密に作り込まれた小説を読んだという達成感を味わえた。
全体の枠組み、プロット自体は奇を衒ってはいない。しかし、ヤクザものというバイオレンスな物語の中心にシスターフッドを据え、さらに女性が心と身体の自由を勝ち取る戦いにフォーカスして描いている点が面白い。
その中で、「女性が暴力を振るうのは、育ちに理由があるはず」「女性らしい格好をするのは当たり前」といった、我々が男女問わず薄っすら抱いている偏見を指摘されたような感覚を覚えた。
ヤクザという男尊女卑の極致ともいえる社会で、抑圧され、役割を強いられる女性たち。そこから飛び出し、自分のしたいことを選び、自らの天稟を大切にして生きる。理想的なシスターフッドによるエンパワメントを力強く描いている。
暴力描写は極めてエンタメ性が高いが、バイオレンスはマクガフィンにすぎない。依子と尚子がようやく自分自身の人生を選び取ったという静かな解放感。胎児のような姿勢と眠り、二人に寄せる波音がババヤガの産声のようで、その爽やかな余韻がゆっくりと寄せてくるようだった。



