
ユメ
@yume_bookworm
2026年3月19日
一瞬の風になれ 第一部 -イチニツイテー
佐藤多佳子
読み終わった
感想
再読
この物語に初めて出会ったのは、私がまだ主人公たちと同じ高校生だった頃のことだった。図書館で何気なく手に取って夢中になり、幾度となく借りては読んだことを覚えている。大人になって書店で再会して自分の蔵書に迎えてからも、何度か読み返してはそのたび魅了された。
そんなこんなで、ストーリー展開はすっかり頭に入っているのに、今回の再読でも感動が色褪せることは全くなかった。むしろ、過去一泣きながら三部作を読んだかもしれない。一気読み必至の面白さなのに、あまりに涙で視界が滲むからしばしば読書を中断しなければならない——佐藤多佳子さんの作品を読むと、そういうことがよく起こる。
自分が歳を重ねたからこそ、主人公たちのひたむきさがいっそう沁みるのかもしれない。連という天性のスプリンターの圧倒的な才能を目の当たりにし、彼と同じ走りこそできないと分かっていても、そこで腐らず、自分なりの走りで速くなろうと努力し続ける新二たちの姿に、深く心を動かされた。懸命に天才を追いかける彼らが放つ光が本当に眩しいし、そんな新二の熱に当てられるようにして連が変わってゆく姿もまた、輝いている。
合宿の夜に無断で宿舎を抜け出した連に対し、根岸が「こんなクソワガママなおまえをかばってやるのは、友情とかそんなんじゃねえんだ。チームのためとかじゃねえ。おれの都合だ」「おまえの走りを見ていたいんだ。短距離やってるモンの夢だ、おまえの走りは。一度でいいから、おまえみたいに走ってみたいよ。夢を見るよ」という台詞を投げかけるシーンが、言葉にならないほど好きだ。



