
ゆっち
@forming123
2026年6月30日
獣の奏者 (2)王獣編
上橋菜穂子
読み終わった
音なし笛を使うことを最後まで拒み続けていたエリンが、リランとの衝突をきっかけに、音なし笛を吹くふりをして従わせざるを得なくなった場面は、とても切なかったです。理想を貫きたかったエリンが現実の厳しさの中で選択を迫られた姿には、「こうするしかなかったのだ」と納得せざるを得ませんでした。
それでも、リランとの心のつながりや絆が完全には失われていないことが伝わってきて、とても感動しました。厳しい現実と、それでも残り続ける信頼の両方が描かれていたのが印象に残っています。一番印象に残った人物はイアルです。
ハルミヤ王が亡くなった後、セィミヤに対して「王国がいかにして守られているかを知らない者が国の長であってはならない」という考えを示した場面が特に印象に残りました。王として国を導く者には、国の現実を知る責任があるという彼の信念には重みを感じます。
その一方で、彼は女性の王を守るという使命のため、自らの人生を捧げる覚悟を貫き続けました。その献身的な生き方は、凡人の私には到底まねできるものではなく、深い敬意を抱きました。この巻で最も考えさせられたテーマは、「人と獣の関係」と「理想と現実」です。
エリンは王獣を支配するのではなく、一つの命として向き合う理想を貫こうとしていました。しかし現実はその理想だけでは乗り越えられず、音なし笛を吹くふりをしてリランを従わせるという苦しい選択を迫られます。その姿からは、理想を持つことの尊さと、現実の厳しさの両方が伝わってきました。
それでもエリンとリランの間には、支配ではない信頼や絆が残っていました。人と獣は本当に分かり合えるのか、その理想は現実の中でどこまで守れるのか。読後も考え続けたくなるテーマでした。

