原っぱレスラー "潮騒 (新潮文庫)" 2026年6月30日

潮騒 (新潮文庫)
潮騒 (新潮文庫)
三島由紀夫
初めて読んだ三島由紀夫は「仮面の告白」だった。 その陰鬱さというか、最初から最後までまとわりつく後ろめたさのようなものが、当時の自分のムードに合っていたような気がする。 「潮騒」ではその一切が徹底的に排除されている。行き過ぎなくらい単純明快で、粘度や湿度の感じられない、ほとんど人工的なまでの爽やかさがある。 「仮面の告白」を読んだ当時の自分には、この作品は受け入れられなかっただろうと思う。 重松清の解説を読んで、この作品が持つ箱庭的な印象は、描写される風景の遠さにも要因があるのかもしれないと感じた。 噴水が置かれ、左右対象に設計されたヨーロッパ式の庭園と、雄大な山水に心象風景を重ね合わせ、岩を島に、細石を水に見立てる東アジアの庭園とでは、自然に対する意識が全く異なっていると聞く。 この作品は前者ではないだろうか。自然を支配し、設計しようとする態度に近いものを感じる。 そう考えると、作中では海や天気が猛々しく雄大に描かれているのも、奇妙なような納得するような、不思議な感じがする。 なんにしても、三島由紀夫の文章力はすさまじい。するする読めてしまった。
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