"赤目姫の潮解 LADY SC..." 2026年6月30日

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2026年6月30日
赤目姫の潮解 LADY SCARLET EYES AND HER DELIQUESCENCE
p12 「私には、赤目姫の美しい声が聞こえる。」 p18 「それほど真っ赤で、まるで赤目姫の瞳のようだった。」 p20 「「賢者であれば、駱駝になれましょう。何故なら、彼が駱駝というものを認識したが故に、駱駝が存在するのですから。」」 p38 「緑目王子は、赤目姫のまだ小さかった頃からの友達だという。」 p42 「それがまた奥ゆかしく、見ている者は、彼女の際立った気品の煌めきを浴びることになるのだ。」 p44 「不思議なものは、不思議のままで良いではないか、と思えてしまうほど魅惑的だった。」 p46 「赤目姫が、私と王子を見てから言った。「曼荼羅ですね?」」 p49 「「何かしら。」彼女の赤い目が、階段の上の王子を捉える。「あ、わかりました。回転木馬ですね?」」 p50 「息苦しさとは、つまり現実的連想という酸素が足りない状態。呼吸はできても、そこから実在的意味という酸素を吸入できない。」 p51 「このように、いつも美には不足し、正には届かない。生きてはいるようなのに、それでは死んでいるも同然の鈍さ。」 p51 「「黒いというのは、言い得て妙なところですね。宇宙は黒い物質で満たされている。とずいぶんまえに言った科学者がおりました。」赤目姫は無音の言葉で話す。」 p52 「「単純というのは、なにもかもが均等に混ざった状態ではなく、むしろその反対、ここが独立し、形を成し、すなわち物質という幻を見せている奇跡的なバランスのことです。私は、この世に存在するすべてのものは、シャボン玉の虹色の殻に近いものだと思っています。あの動揺して弾けるまでの一瞬が、この世の存在のすべてだと。だとしたら、その薄い殻の上をすべる流れにこそ、存在というものの反射も屈折も帰結するというもの。」」 p52 「「残念ながら思考は及ぶが、行為は届かない。想像は及ぶが、存在は遠い。美しさと同じ。悲しさとも同じ。感覚はあっても、感触はない。ああ、なんて、僕たちは哀れなんだ。」」 p52 「「違うのです。それは、悩むようなことではなく、いえ、たしかに悩むべきことなのですが、悩むということが、すなわち停滞の状態ではありません。反対です。その思考による停滞こそが、貴方の存在の証ではありませんか?そう考えれば一転して、既に存在は証明されているも同然。思考もまた、アルゴリズムの流れであり、表に光や形を出力しなくても、自身の中では歴として刻まれるもの、存在するものです。」」 p53 「目の前には、美しい男女が立っている。赤い目の美女と、緑の目の美男。」 p54 「私の存在?それも、揺らいでいることがわかった。」 p54 「だが、私のその一縷の希望も潰えた。」 p59 「「うん。しかし、人間の不幸の基本原理ってやつは、すなわち、結局は自分の心しか知らない、という情報不足に起因しているんだ。自分以外の人間のことは想像するしか手がない。世の中には、もの凄く沢山の人間がいて、みんなそれぞれに自分を持っている。みんな考えているんだ。でも、考えても考えても、自分の気持ちしかわからない。他人の気持ちはまるでわからない。とにかく、精一杯想像してみるんだけれど、その想像っていうのも、所詮は自分の思考や感情との対比から形成されるものだ。どんな高等な頭脳であっても、これは同じだろうね。基準は常に自分の観測にある。例外があると思うかい?」」 p85 「「理解」とは、すなわちなんらかのシンボルに関する自己への展開といって良い。」 p85 「ようするに、理解という「展開」には自己破壊を伴う、ということである。」 p86 「私を含めてほとんどの凡人は、特に大人ならば、自己の内のデータに浸かっている。酷い場合は既に溺れている。無となることなど絶対にない。むしろ無を恐れるが故に、無用なデータまで貪欲に取り込み、概念をむやみに構築し続け、それらの破壊をまた極度に恐れるといった悪循環に陥る。」 p86 「この世で得たデータを無にするというのは、胎児に戻るようなものだろう。その感性あるいは心境に擬似的にであれなりえる者が、私が考える天才である。」 p86 「そういう人物の無邪気さを私は何度か目にした。本当に彼らの「知」とは計り知れない。自らの理解の蓄積を瞬時に捨て去ることができるからこそ、どんな新たな理解も容易に展開することができる。」 p95 「「ここにいる者は、何をなすのか?」」 p97 「「理由を言葉にするのは、あまりにも無粋かと。」「言葉というのは、すべて無粋なものです。」」 p97 「「接吻をお許しいただけませんか。」」 p101 「「おやすみなさい。」「良い夢の名を。」」 p102 「孤独と愛情は、ほとんど表裏一体のもので、両者の間には気体も液体も浸透する極めて薄い膜しか存在しない。片側に干渉すれば、裏側に瞬時に染み出る。僅かにある遅れが、その膜の存在の意味であり、その遅れが、両者を別の感情だと認識させるにすぎない。」 p102 「しかし、たとえ最愛のものに触れ、あるいは触れられても、それが愛情だと信仰できるのは一瞬のこと。いずれは、恐ろしさに近い湿った反動が寄せ返してくる。」 p105 「「観測が、すべての存在の証。天に通じる唯一の窓。古来、人間の源でした。」」 p115 「KILL ME PLEASE」 p121 「「貴女は、シンディよ。」」 p131 「ただ、彼女の人間としての完璧さに、私は圧倒されていた。あまりにも滑らかな頬、そして顎から首へのライン。信じられないほど美しい。生きている人間とは思えないほどだ。」 p132 「「貴方は、何をなすの?」」 p138 「しかし、陰があることでコントラストが際立ち、一つ一つの表情あるいは仕草に一層の深みが感じられた。」 p142 「それは、別の言葉でいえば、「美の正義」にほかならない。」 p148 「「息は、吸わないと吐けませんけれど、でも、カスピ海の空気を吸わなくても、生きていくには支障はありませんものね。」」 p151 「「そうなの。どこまでの話かっていうのが、いつも一番難しくて大切なの。どこまでが認めなくてはいけない現実で、どこからは想像、それとも仮定の話なのか。考えていくうちにわからなくなりませんか?」」 p152 「「夢の中で夢を見るみたいなネストになっていると、たしかに混乱しますね。」」 p157 「「貴方は、何をなしたのですか?」赤目姫だった。」 p157 「「なれるものになれます。」赤目姫は頷いた。「ご自身の願望は、ご自身にとっては現実の未来。」」 p168 「「ああ、そこまでは考えていません。それは、そう、砂漠の大河が突然移動するのと同じ偶然です。世の中の万物は揺らいでいる。ちょっとした切っ掛けで、小さな安定を乗り越え、別の安定を求めて動きます。」」 p206 「描かれているのは、曼荼羅である。」 p208 「「危険な失敗を避ける最も有効な手法は、失敗をした直後から、失敗する一瞬手前に立ち返ることです。失敗から学んだことを覚えているうちに。けれども、一般に、たとえ一瞬であっても、時間を遡ることはできません。先生がおっしゃりたいのは、それですね?」」 p213 「緑の目をした青年のことだった。」 p214 「私、かの王子に恋をしたのですよ。」 p217 「我々は、皆、波形。」 p217 「私はいつまでも私ではないのか。私はどこまでも私ではないのか。」 p219 「瞳の色。輝いて、消え。無。空。緑。黄。橙。赤。紫。?」 p224 「「不思議なことを言うね。ああ、そうか、君の認識できるものが、この世のすべてであって、それ以外のものは、なにものも存在しない、とそう考えているわけだね?」「そうではない。私は、そんなふうに考えているわけじゃない。ただ、誰かが、私にそう考えるように指示している。いや、違うな……。暗示をかけている。ということじゃないだろうか。私は、見せられているんだ、見て良いものだけをね。私だけじゃない、君もだし、それから、おそらくは、そう、世界の大部分のひとたちが、きっとそういう存在なんだと想像できる。」」 p227 「「それは、つまり、考えてはいけないものだよ。見てはいけないものを見ようとしても、視線はそちらへ動かない。しかし、考えることはできるはずだ、」」 p227 「「つまり、私たちには、そもそも視力がない。目がないんだ。見ていると思っていただけなんだ。しかし、思っていることは確かなんだから、頭脳は存在する。まっとうかどうかは別として、考えることは、ある程度は自由になるはずだ。」」 p227 「「そもそも、君と私の二人が実在するという証拠がどこにあるというんだい?」」 p228 「「必要とか不要といった意味さえ、もうどうだって良いと思われる。おそらくは、思考が作り出す純粋な情報というか、つまりは、発想というやつだけれど、これを生産するために構築されたネットワークなんだ。結局は、そこへ行き着くと私は思う。私の頭脳は、発想という卵を産むために鳥小屋で飼われているんだ。」」 p230 「「僕が存在しないのなら、それはつまり、僕が君の一部だということになるね。君の中に、君とは違った人格が存在することになる。それでも、やっぱり存在なんじゃないのかな。蛸の脚が八本とも全部同じだとはかぎらない。長いものもあれば、短いものだってあるさ。でも、どれも同じ蛸の脚なんだ。」」 p237 「「それは、たぶん、今のこの世界の外側に、目的があるからだね。そうとしか考えられない。我々をそちらへ向かわせないよう、内側だけを見せておく。その間に外側で自由なことができる。」」 p244 「「ね、君、本当に夢を見ているのかい?私は、さて、僕だったかな、それとも君だったかな。」」 p249 「「我々が自然だと感じるものとは、少なからず不自然なものだ。」紫の目が穏やかな口調で切り返した。「なにしろ、生命は自然であっても、人間が考え出すことは不自然極まりない。不自然という定義がそこにあるともいえる。」」 p265 「「どうして、人間の血は赤いのでしょうね。」赤目姫は呟いた。」 p266 「タリアはオレンジ色の瞳を窓の外へ向けた。「自分の思いどおりにならないときに、それが不都合だと認識しなければ、問題はありませんが。」」 p267 「「推測することは、知ることではありません。」」 p277 「瞳の色はわからない。自分の目は自分で見ることができないからだ。」 p283 「情報が知識として個人の中に定着しているという幻想は、頭脳というものの「存在」を偽装するのと類似している。」 p283 「青い瞳が、ただ光の中に浮かんでいる。」 p284 「「貴女は、自分のことを知っているのね?」青い目がきいた。「いいえ、なにも知りません。でも、知りたいと思っています。」「何が知りたいの?」「自分、自分たち、この世界、すべてが、存在しているのかどうか。」「存在していると、なにか良いことがあるの?存在していないと、どんないけないことがあるの?そもそも、存在って何?1という数字は、どうして存在するの?0があって、2があれば、その中間が1でしょう?」」 p285 「「私をここへ導いたのは、何故ですか?」「導いた?いいえ、導いたのではない。貴女の意思が、貴女をここへ導いたのです。」「では、私の意思は、存在するのですね。」「どうして、そんなものに取り憑かれているのかしら。海には波がある。あの波は存在しているの?そこにあるのは、ただの海面、海水、その運動が波というものでしょう?それは、存在しているものだと、貴女は考えるわけ?」「わかりました。意思と思考は、つまりは信号なのですね。情報は、電子の運動でしか現れません。それと同じことなのですね。」「そんなところかしら。不思議だわ。どうして、人間の意思というのは、自分たちの存在をそんなに気にするのでしょう。」」 p285 「「貴女は誰ですか?」」「そうね、私は、貴女以外の者です。でも、それも正確ではない。私は、貴女でもあるかもしれない。私は、この世界かもしれない。」「世界?」「そう、貴女は、世界が存在していてほしい、と望んでいる。だったら、私が世界です。どう?納得できたかしら?」「貴女が、この世界を作ったという意味ですか?」「そうかもしれない。」「それでは、まるで、神?」」 p287 「「信号だからといって、なにも卑下することはないのよ。その信号の組合わせで、貴女はそこまで推論することができるのです。けれども、思考や論理なんてものは、解像度が高くはない。もっとデータ量が多いのはイメージ。なにも考えなくても、ぼんやりと思い描くイメージこそが、最も偉大な汎用の意思。その信号のデータ量こそが、人間というものが到達した高みといえます。人は色を見る。明暗だけではない。フルカラーのイメージを見ているの。そのデータ量には、他の生命体は到底及ばない。」」 p289 「青い目をしている。こちらを見ていた。白い滑らかな顔。小さな赤い唇。闇に拡散するかのような黒髪。少女になった。」 p291 「誰もいなかった。誰かがいても、結局は同じだった。自分以外のものというのは、つまり、いてもいなくても同じなのだ。作り出せるものは、すべて作られたのだから。自然に生まれるものは、限りなくいとおしい。けれども、それもまた単なるプログラムの出力にすぎない。結局は、自然などではない。意図的に、計画的に、仕組まれたことだった。遺伝子アルゴリズムによって、計算され、自己成長するシステムの産物にすぎなかった。」 p291 「欲しいものは、すべて作ったけれど、そのうち欲しくなくなる。愛するものは、すべて愛したけれど、そのうち愛せなくなる。」 p291 「ほら、私の犬が駆けてくる。金色の毛のロイディが。」 p299 「今、一巡り思い出したことは、何だったのだろう。それどころか、もっと沢山の時間、沢山の人々、沢山の思考を思い浮かべた。わからないよ。何なの?わかった?わかったから、もういい?」 p302 「「こうして、その美しい少女は、皆の前から姿を消したのよ。私が貴方に話したかった、美しくも悲しいお話は、これでお終い。」」 p302 「「彼は、そう……、何だったかしら、シルーノベラスコイヤ?そう、それそれ、それになったの。」」 p305 「見えないところが見えるというのは、不思議なものだ。誰の意思でもないのに。」 p318 「白いワンピースの少女がそこに座っているのが見えた。」 p322 「「青い目の少女は、誰だったのでしょう?」」 p323 「私は、しばらくそこに立って、闇の中に消えていく白いコートを眺めていた。一度だけ振り返ったとき、彼女の目が赤く光ったように見えたけれど、それはきっと私の錯覚、あるいは願望だっただろう。目眩のようなもので、そのくらいの期待は、ときどき現実という膜を靡かせるものだ。」 p324 「主人と最初に出会ったとき、彼は駱駝だった。」 p328 「「自分たちは、そのときどきで正しいことをしているつもりでも、少しずつ、どこかで狂っていて、結局はあとになって、首を捻ることになるのよ。なんだって、そうなの。全部、少しずつ歪んでしまっているから、純粋で綺麗なものなんて、どこにもないわ。」」 p328 「「ワンちゃんなのに、そんなことがわかるの?」「わかるさ、それくらい。」」 p330 「不思議だ、なにか夢を見ていたのだろうか。夢を見ていなくても、こういったことは多い。現実とは、常に曖昧な断片でしかない。」 p331 「孤立とは、すなわち操られていない自由か。虚空とは、まるで今生まれたばかりの命か。」 p334 「いつしか、ガラスの外の樹の枝に、白いワンピースの女性が座っていた。」 p334 「「疑うべきものは何?」彼女の優しい言葉が伝わってくる。」 p335 「「自己矛盾?それが何だというのでしょう。」」 p338 「私はいつも一人だ。一人だから私なのである。」 p353 「なるほど……。人形劇は、まだ続いている。」
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