さぶりす "変身" 2026年6月30日

変身
変身
フランツ・カフカ
家族のために身を粉にして働いていた僕が、ある日突然巨大な虫になっていた件。 とんでもない話だが、その理由はいっさい説明されず、淡々と話が進んでいく。現実には人が突然虫になることなんてないが、それでもこの虫化には色々なことを重ねて見てしまう。突然働けなくなる、自分や身内が認知症になる、障害者になる、誰からも必要とされなくなる。そんなことが自分の身、あるいは身の回りには起こり得ないと断言することができるだろうか。そんな時、自分は、周りは、どうするだろうか。 グレーゴルの変化により、グレーゴルに大きく依存する形で維持されていた家族システムもまた変化する。父親は働きその威厳を取り戻し、母親もまた働きだし、子へ向けていた愛情も恐怖へと変わり、献身的な妹グレーテは、兄の世話をするという役割を獲得するも、それは兄を想う愛情だけで維持できるものではなかった。 変化によってシステムが維持出来なくなった時、当事者達が望もうが望むまいが、愛があろうがなかろうが、そのシステムは変更を余儀なくされる。そしてグレーゴル抜きで維持出来るシステムが完成した時、グレーゴルは本当に家族にとって必要のない存在、いてはいけない存在になってしまう。突然虫になり、システムから排除された者は、果たして本当に人でなくなってしまったのだろうか。そうではないと語るグレーゴルから、途方もない悲しみが漂ってくる。
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