蛸足配線
@nekoai30
2026年6月27日

まだ読んでる
『エオンタ』を読み終えた。タイトルは「存在するものたち」の意だそうだが、登場人物のほとんどが不在のものを見つめ不在のものに語りかけているように思える。しかし、現実の物理的次元に重量や質感を持たずとも、言葉で表現できるのであれば、それは言語による喚起という場においては確かに「在る」のだ。失語症の詩人Pは、言葉から立ち上がるこの豊饒な幻覚の世界から、少なくとも表向きには解放された風である。彼の内面には依然としてこの幻覚の場が根を張っているのだとしても、彼はそれを他者に向かって表現する術を持たない。残滓のような言語常同症が彼の口から噴出し、Aはそれを受け取る。Aの内に芽吹く幻覚がPの言葉を介して生じたものであるということは、Pもまた彼の内面にAと同一の幻覚を見ているということを意味しない。わたしたちはいつも言葉を取り交わしながら、それぞれ自分だけの夢を見ている。