本の虫のミノ "キネマの神様 (文春文庫)" 2026年7月2日

キネマの神様 (文春文庫)
朝の満員電車や大学の食堂で大半を読んでいたから、涙を引っ込めることに全神経を集中させた。それでも鼻をすすり、呼吸が浅くなって鼓動が速くなるのを止められなかった。キネマの神様は実在する。映画館にてんで縁のない私が、古き良き名画座の様子を垣間見て、どれほど美しくて素敵な世界なのだろうと羨ましいような、そして経験もないのにどこか懐かしいような、そんな気分になった。やはりこの物語で印象に残ったのは、ゴウとローズ・バッドの熱烈な映画の議論だろう。性善説に基づいた論を展開するゴウと徹底して監督の心理や脚本に潜む闇の部分を暴こうとするローズ・バッド。相反する2人が積み重ねる言葉に共感する者のどれほど多いことか、想像に容易い。語りたいことが多いのだが、書きすぎたら伝えたいことも伝わらないものだから限界を決めている。この結界は決して破られることのない異次元なのだ。
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