
yomitaos
@chsy7188
2026年7月2日
黒牢城
米澤穂信
読み終わった
@ 自宅
黒沢清監督の映画版を観て、あらためて原作を読み直したく文庫版を購入。時代ものは、ただそれだけで読み手にリテラシーを要求してしまうものだが、これは違う。骨格はミステリーで、安楽椅子探偵が謎を解くという流れも、ある意味で慣れ親しんだ構造。トリック自体もそう驚くものではない。というか、そこに面白さがあるわけではない。
あえて書くならホワイダニット系の物語で、いわゆる黒幕にあたる人物がなぜこういった行動を取ったのかが面白く、しかも普遍性がある。解説でマライさんも言っているとおり、ナチスドイツの殺戮や文化大革命など後の世界で起こる出来事と地続きになっている。武家の矜持は現代人に理解できなくても、マチヅモが原因で起こる事象に置き換えれば、そう大きな違いはない。
作中で荒木村重がつぶやく、信長は殺し過ぎるという言葉が重い。あらためて織田信長という人物が生涯に手を掛けた人間の数を考えてみると、越前一向一揆殲で14,000人、天正伊賀の乱の30,000人、比叡山焼き討ちで3,000人程度とされているから、これだけでも50,000人弱。日本史上、これほど人を殺した人間はいないのではないか。
こんな化け物に仕えるというのが、どういうことなのか、何を意味するのか。冷静に考えてみると、理解が追いつかない。
映画を観てから、ずっとこの作品のことを考えている。自分にとって、死ぬまで忘れないであろう、心臓に三間鑓を打ち込まれたような傑作だ。


