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@yuyurara
2026年7月3日
すべて真夜中の恋人たち
川上未映子
読み終わった
かつて読んだ
恋愛小説ではあったけれど、本作の魅力は人間を丁寧に描いてくれたこと。だれにも気づかれず視界にすら入っていなかった存在に光をあててくれていた。
冬子の生きづらさが薄まればいいのに。そんな願いがゆらゆらそばにあった。蓄積されていく悲しみも痛みも心細さもぜんぶが滲むように伝わってきて苦しかった。
三束さんへの想いで溢れてしまったときの心の揺れ動きはあまりに切実で張り裂けそうになった。
そして、夢と現実の境をなぞっていくかのように今この瞬間の現実にある見えるもの見えないもの、さわれるものそうでないものを三束さんの名前を何度も呼びながら手を伸ばしてふれながら確かめていく。溢れる感情を声にそれでもすり抜けていってしまう声。何度呼びかけても三束さんから届かない、「はい」の返事。ここは切なさが全開になる場面でした。
抑えていた感情にのみこまれそうになりながらも、視界を遮っていたものをひとつずつ掻き消していくように、現実世界で起きていることを肯定し、自分を認め、視線を上げた先に映し出されていたもの。消えない光を探していた冬子ちゃんの目に映されたふたつの光。このときの静かな感動は忘れたくない。
聖さんの言葉が印象的。感情や気持ちがだれかの引用なのでは〜とこぼしたあの気持ちは、共感度高め。
ハイライトはラストシーン。
いままで選ぶことも自分の意思も気持ちも置き去りにしていたあの冬子が、星の数ほどある言葉に触れてきた校閲者である冬子が、 自分のなかで生まれた言葉に気づいてつかんで引き寄せ書き留める。このなんてことない一連の動作に静かに胸を打たれていた。
はじめて" 消そうとしない言葉 " に感じられたから。
自らの光を消しては間違いを探すばかりだった冬子が、気持ちを手放さず心のままにつかめたはじめての言葉だったのでは。
朝になれば消えてしまう真夜中の星たちを思うと切なさが込み上げるけれど、冒頭のあのシーンの美しさがいつまでも消えない景色となっているように、ふたりの中でもまぶたをとじては映しだされ灯しつづける光となってくれるだろうと思うことで救われる。
冬子と三束さんの孤独を埋め合うように流れていたふたりだけの時間、会話はやはり特別なものだった。
川上さんの繊細な表現。
光について捉えていた感覚、眼差し。
散りばめられた言葉。丁寧に紡ぎ出された言葉の欠片。
どこからどう眺めても綺麗だった。




