
ドッグストエフスキー
@dogstoevsky
2026年7月3日
夏帆
村上春樹
読み終わった
春樹、読んだぞ!!!!!!ありがとう!!!!
初!切なくて温かい村上春樹!
主人公はアラサーの絵本作家の女性。だからなのか、読み心地は絵本やアニメのようで新鮮。可愛らしい作品だと思った。
それはたぶんこの作者の作品にしては身近な縁を大切に描いているからというのもある。
「アラサーの自立した女がこんなこと言うかいな」(特に還暦にもなる母親のセクシーな下着を見た時に赤面するのは変。普通は考えたくなくて眉を顰めます)はありつつ、新小岩の叔父や父親は親密に描かれる。村上作品は、世界とあえて距離をおいた主人公が多いが、この作品は「若い女性」という社会一般的に受動性を付与されやすい人物を通して、まわりからの親切や愛情を自然に受け取っている印象があった。
村上春樹という一人の男が女の登場人物を通して世界を捉え直そうとしている。
作品全体に流れる不器用な優しさは、登場人物たちが異様に内向的な人々でありながらも、世界や他者と繋ぎ直されたいように話すところにも出ている。
村上春樹はずっと父と子の話をかいてきたけど、本作は母と娘。家族と接続されている一般的な女の人のあり方を奇妙に暖かく書き出している。
最後の母親のセリフは地に足がついていて、生活に溢れ、そして人生の一般論なのに説得力がある。これはもしかしたら村上春樹作品の中でもリアルな身体が出てきた作品だからかも。異様な眠気に囚われてこんこんと眠る母親の姿は、誰でも見たことのある「体の弱い家族」だ。タフで健康的な村上春樹作品の登場人物とは違う。そんな身体性を通して、ありがちだけど切なくて苦い人生の教えが嫌味なく浮き彫りになる。
いかにも村上春樹らしい作品だし、こんな人いるのかなとはなるけれど、なのに、遠目で見たら「いま、ここ」にいる人たちを浮き上がらせている。つまり近くで読むと村上春樹的な人工性や違和感が目につく。でも一歩引いて作品全体を眺めると、現代の人間の姿がちゃんと浮かび上がっている。そんな変わった読み心地の一作だった。
村上春樹はこれからの執筆についても意欲的なようだから、一読者として楽しみにしています。




