
紫嶋
@09sjm
2026年7月2日
花まんま
朱川湊人
読み終わった
借りてきた
昭和の時代を舞台に、「大人による幼少期の回想」という形で綴られる短編集。いずれの話も人の生と死の気配が色濃く漂い、そこに性や差別、幻想がゆるやかに織り込まれている。
回想の物語であるというのがポイントで、つまり作品はどれも子供目線で語られる。
まだ人の生き死にというものに対しても、性的なものや差別的なものについても、また現実と非現実の境界に関しても、大人ほど明確に意味づけや線引きをしていない(できていない)子供の目を通した物語だからこそ、全てが渾然一体となったありのままの形で展開する。
それを目の当たりにした子供たちも、なんとなく嬉しくなったり悲しくなったり、不安を覚えたり妙に悟った気になったり…という素直な感情を抱く。そこから生まれる柔らかさのようなものも、この本の味わいの一つに思う。
とはいえ、子供目線の物語であっても子供のための物語ではないので、登場人物の中にはひどいとしか言えない大人も沢山出てくるし、語り部だった子供の中にはその後悲惨な人生を歩んだ者もいる。幻想的な要素が組み込まれつつも、人間に関する描写は大変現実的であるところもまた、作品らしさかもしれない。
いくつか収録されている話の中でも、表題作の『花まんま』は、一番安心して読めるというか、あまり人間の醜悪な面に触れることなく、温かな気持ちになって終われるお話だった。
(この話は映画化もされたようだが、登場人物の設定などが大幅に改変されてる様子なので、原作は原作として読まれて欲しいと思う)
