いるかれもん "世界の教育はどこへ向かうか" 2026年7月6日

世界の教育はどこへ向かうか
「主体性」「探究」「コンピテンシー」などなど、教育分野で話題となる事柄について、国際的な動向を踏まえながら現在の課題を整理して、これからの在り方について示唆している。仕事の関係もあってとても勉強になったし面白かった。  まず、それぞれの話題について、概念の整理から始めてくれるのがとても嬉しい。というか、それが本書のメインであり、魅力だと思う。「主体性」とか「探究」は日本の教育業界においてもよく語られるキーワードになっているけれど、そもそも何を指しているのか曖昧なまま、理想だけが語られている印象があり、私自身ももやもやしていた。そこに対してOECDのレポートや、海外の教育研究で提唱されているモデルを導入して概念を整理している。「主体性」にしろ「探究」にしろ、段階があり、それが具体的にどういう段階なのかということが明確に示されていて素晴らしいと思った。今の日本のカリキュラムは途中の段階を無視して最初から一番レベルの高いところを目指そうとしている印象がある。そこに対してこういうモデルが広く共有されると、各学校のカリキュラムや授業のあり方も変わっていくのではないかなぁと感じた。このまま大学の講義の教科書にも使えるのではないかとさえ思う。  カリキュラム・オーバーロードについても示唆に富んでいた。前に読んだ青木栄一『文部科学省』でも、学習指導要領などについて理想論ばかり先行し、各業界からの要求を満遍なく取り入れた結果、教えるべき内容が増大しているという話があった。この本によるとそうした現象は海外でも起きていてカリキュラム・オーバーロードと呼ぶらしい。その中で、例えば金融リテラシーの国際比較をしてみると、金融教育のカリキュラムが充実している方がリテラシーが高いわけではなく、数学のリテラシーの高い上海が金融リテラシーも高いというデータが紹介されていた。その上で、あらゆるリテラシーを直接的に育成するのではなく、キーとなる能力を育てていくことが重要と書かれていた。こういう話は直観的にそうだよなぁと思っていたけれどデータがきちんと示されていて面白かった。こういうデータの積み重ねは将来を議論する上で大切だと思う。  まとめると、このまま大学の教科書にも使えそうな気がするくらい基本的な概念が丁寧に整理されていてとても勉強になった。機会があれば同じ著者の前著も読んでみたい。
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