はるき ⚠︎ネタバレ有⚠︎ "キッチン" 2026年7月6日

キッチン
キッチン
吉本ばなな
図書館で目が合って、数十年ぶりに読み返した。 収録されている三作品、どれも懐かしく、命綱でもあったなと。 初めて読んだのは、確か、中学生の夏休みか冬休みだったと思う。 その頃のわたしと言えば、生来の気質と、その年頃特有の繊細さが殴りあっている最中で、よく分からないけど大変な毎日だった。ような気がする。 過去の事なので、思い出補正で多少盛っているかもしれない。 兎にも角にも、戦いの日々であった。 そう振り返れる未来へと繋いでくれた物語のひとつだった。 特別つらい事がある訳でもなく、環境も悪くなく、でも確かに苦しくてしんどくて、「いつこの人生が終わるんだろう」と受動的に待ち続けていた。 もし、能動的に終わらせたらどうなるんだろうという好奇心が勝ることなく済んだのは、もちろん本能的な恐怖が一番だけど、遺された側に続く世界を知ったからでもある。 自分を愛してくれた人達の隣に死を置くというのは、こういうことなのか。 物語に詰め込まれた、喪失感と痛々しさと浮遊感。 なんとか明日を探しながら、ゆるゆると、少しずつ受け入れていくしかない程の悲しみ。 この程度の覚悟で、それを与えてはいけないと思った。 わたしのつらさも苦しさも、誰と比べるものではなく、感じている自分の物差しで語っていい。 その原因が「誰か」ではなくても、生活環境に恵まれていても、当時のわたしは確かにしんどかった。 それでも、それでもだ。 自分の人生を手放した後に、泣くに泣けず、受け止めきれず、明日を彷徨う人達がいるかもしれないんだと、思い浮かぶ顔を登場人物達に重ねて、ダメだと思った。 読み返すまで、そんなすら、すっかり忘れていたけどね。 人間なんてそんなもんだ。 けど、根本的にはたぶん、なにも変わっていない。 今も「早く終わらないかなぁ」と受動的に思っている。 隣に死を置きたくない人は少し増えた。 だから、目が合ったのかもしれない。 物語を読んで心を満たして、お腹を満たして、そして眠って。 今のわたしは「誰かを悲しませたくない」ではなく、「自ら生きるために」その営みを積み重ねている。 お前にはそれが必要なんだと、時を超えて、また教わった気がした。
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