
トラ
@Toreads1234
2026年7月7日
ジャガー・ワールド
恒川光太郎
糸を撚って布を編んで、立体物を作っていくような、丁寧で重厚な物語。630ページあるのでできることであり、無駄を削ぎ落としたから雑味が無い。面白さがギチギチに詰まってる。
マヤをベースにアステカをミックスしたようなある王国と周辺の話。主人公スレイは平民から奴隷へ、運と勇気で戦士になるがそこからどう振る舞っていくか。期待を裏切る成り上がり。
他にもゴリゴリの戦士や神官、宗教者など準主役たちのばらつきが話を分厚くしていく。
文章としては、内省はあるが感情表現が少なめで、出来事の積み重ねで描写していって、要所要所で少しエモーショナルな表現という、サラッとした書き方で進めるところが自分には合っていて、とても読みやすい。
会話も砕けた表現で自然に近く読みやすい。
トップクラスの頭脳が戦う問答のシーンは「未来をどう作っていくか」という、現代的なテーマでやり合う熱いシーン。
重要ではないと思っていたキャラが意外な所で、不可逆なことをしでかして、世界を進めていくという働きをする。
少し歴史が関わるが、感覚は現代だから知らなくても楽しめると思うし、長いけど続き気になって読んじゃうだろうし、圧倒的なエンタメを求める人におすすめ。
「人を支配するのは恐怖こそ最良の道具である。舐められないからこそ内政が混乱しない。だが━━著しく愚かであることはどこまで許容されるのか。」(p.85)
暴力的な暗君に対して。
「生贄はこの大地で千年以上連綿と続いている文化である。王と神官の社会構造に根深く関わっており、それらの否定は〈非文明人の思想〉ではないか。」(p.235)
パラダイムシフト。今とは逆の価値観。どっちが正しいとかではなく(現在の倫理観では明らかに誤り)。
