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トラ
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@Toreads1234
あまり「美しさ」みたいなものは理解できない。物語とか知識による「刺激」が欲しくて読書してる気がする。ロマンスは嫌いでロマンが大好き。
  • 2026年7月1日
    「酔っぱらい」たちの日本近代 酒とアルコールの社会史
    アンケートや警察の検挙数などのデータ、法律や村の掟、各種証言などを通して、その当時、お酒はどんな扱いをされていたかを描写する本。それぞれの時代で、お酒を飲むことに託された意味が変遷していくのが面白い。 「村落社会の中核的生産物(米)を、半生産的な液体へと変換し、しかも無目的に浪費する、という飲酒儀礼の本旨にとって、濁酒ほど似つかわしい酒はほかになかった。」(p.45) これは、本当に今の自分からは絶対に辿り着けないお酒を飲む意味。大切なものの浪費=無駄だと思うけど、無駄からしか生まれない文化は確実にあると思う。 「昼酒に対する戦後社会の不寛容さ」(p.84) パラダイムがシフトしていることを感じる一文。 「余暇飲酒の労働化・理性化と呼ぶべきこの現象」(p.91) これもパンチライン。 「だがその一方で、専門家の知見から大きく逸脱した、正反対の薬効イメージも、日本社会では広く信仰されてきた。アルコールには勤労者たちの疲れをとり除き、労働力を回復させる、すぐれて生産的な効能が含まれている、という想像・信仰である。」(p.122) 「『薬効』についての広告規制のゆるさもあいまって、20世紀前半のメーカー企業が自社ビールに付与したイメージは酒というよりは、疲労回復剤や栄養剤のそれに近いほどだった。」(p.168) お酒は回復薬として扱われていた。 「年間の種類別消費量において、ビールが清酒を追い抜いたのは1959年度である(清酒65万キロリットル、ビール71万キロリットル)。」(p.166) なぜここで逆転するのか、清酒の独走を許さずビールの台頭を呼び込んだ時代的な要請。 皮肉なことに今の風潮として、アルコールは迫害され「無」へと向かっていると思う。巻末にノンアルと清酒の量が並んできてる話が載っているが。 確かに、飲酒の害が喧伝されたり酒の場での犯罪や事件など、迫害を後押しする事象が多く観測される。しかし、社会問題が解決していったとしても、この文化が無くなってしまうことには反対だ。
  • 2026年6月27日
    あなたはなぜ雑談が苦手なのか
    勝手な偏見で、そこそこ上手くやってきたコミュニケーション強者が、雑談を盛り上げる手法を伝達する本だと思ってたけど少し違った。 「地面の上で上手に走る方法を知る前に、土の中から自力で地面に這い上がることを頑張らないといけない人もいる。」(p.178) 親子関係に苦労があった著者の定義する「雑談」とその効能について。心理的安全性みたいなものも含めて、かなりコミュニケーションに混乱をしていた著者が、脳を回して、人と話して、内省し、行動し、積み上げて積み上げて崩れた部分を補修して、血で塗り固めてきた現在、コミュニケーションを職業とする中での気づきや提言。自分を知り、自分の中の蓋をしていた領域を解放していくためにも他者との関わりが重要だと。 正直、真摯さと努力の量が違いすぎて、全然話が入ってこないところもある。 また、「雑談(こちらが聞くこと中心)」っていう、目的を設定できちゃえば、そこそこできる気がする。生活の中の会話は、この目的のコンセンサスを取りながら進めるから難易度が爆上がりする。話を広げるのか、まとめるのか、傾聴するのか、相手は何かもっているのか、こういった判断の部分に自分は難しさを感じていると気づけた。かといって友達と話す時に「今日は話を盛り上げるタイプ?聴いて欲しい感じ?それともひたすら打ち合う?」みたいな確認して始めないし。いわゆる「お喋りの技術」ではなく、この空気の読み方・作り方みたいなものが自分が必要とする能力だ。 「自分語りは脳内で快楽物質を分泌させる」みたいなネット記事を読み(これは自分の元からの考えを強化するもので)、自分のことを話すことは避けてきた。自己開示が苦手。でも、桜林さんの柔軟さは憧れる。 態度と言葉選びがとても好き。 「わたしは断るのが得意で、なんならやりたくない人がやるのは相手に対して失礼だから、断るのは相手のためだとすら思っている。」(p.98) 「伝わりにくい相手に伝えるためには、言葉が通じ合う場所を探さないといけない。言葉が得意だからといって言葉でねじ伏せるのではなく、相手と問題を共有できる場所を探り、敵対せず、伝えないといけない。」(p.185) 絵や動画、言葉(書き言葉と話し言葉)など、自分が使えるツールの中から柔軟に選んでいきたいし、チャンネルを増やしていきたい。 前提、抽象度、節の短さ(話題の掘り下げ方)があまり自分にはフィットしなかったが、学びのある本だった。連載を追いかけて毎週の楽しみとしての方が自分にはよかったかもしれない。
  • 2026年6月27日
    成瀬は都を駆け抜ける
    三部作の完結編。終わってしまって、本当に寂しい。姪っ子みたいに、成瀬の成長を見守りたい。 平野レミ、古畑任三郎、ルフィとかみたいに、「この人だったらどう考えるかな」が成り立つような、魅力的で強烈で芯のあるキャラクター。強くて、フラットで圧倒的な善(を探っている)。人を惹きつける求心力と、周囲の人が成長したくなるような遠心力がえげつない。 就職したら敬語使えるのかな、何の仕事に就くのかな、これから何枚賞状もらうかなと、成瀬の未来が希望をくれる。もちろん出来すぎたフィクションなんだけど、ワクワクさせ続けてくれるエンターテイメント。 島崎のこの心情は、読んでない時には意味が分からないが、一作でも読めばその影響力を上手く表現した文に感じる。 「自分が大津の空気にチューニングされていくのがわかる。このまちには成瀬がいるのだ。」(p.197)
  • 2026年6月26日
    アルプス席の母
    カバーとタイトルから熱い青春系かと思ったけど、そこから一本筋をずらしたような。前半の裏切ってくる、「なんの話?」という部分は苦しいけどよかった。漫画のバトルスタディーズを別の視点から見た感じ。 悪役もいるにはいるが、最後まで読むと「いい人に恵まれてよかったね」となるので、構造が簡素化されてるように感じてしまう。
  • 2026年6月19日
    夜のピクニック
    とにかく青春。朝日を感じられる、生命力に満ちた作品。 高校最後の歩行祭(夜通しで80km歩く)で何が起きるのか、起きないのか。 融と貴子はお互いのことを意識するあまり恋人関係にあるのではないかと周りに疑われる。 昼から次の朝まで歩く中、色んなことを話し、色んなことに気づいていく。自分のことだったり、自分の外のことだったり。 途中の犬の死体とか水死体の意味は掴みきれてないけど、人生はあっという間だからうだうだしてられないよということかな。ずっと読みたいと思っていた本だけど、なんかタイミングが合わず。イラつく描写もあるけど、高校時代の未熟で甘い感じ、でも1日が明確に光ったり闇ったりしてた感じ。よかった。 「普段は、二人の会話は雰囲気だけで進んでいく。言葉の断片だけがやりとりされ、二人が描いている絵は周囲の人間には見えない。」(p.142) 「だけどさ、雑音だって、おまえを作っているんだよ。(中略) このノイズが聞こえるのって、今だけだから、あとからテープを巻き戻して聞こうと思った時にはもう聞こえない。」(p.144) 「誰かを個人として、恋愛対象として愛していたのではなく、彼女たちの存在そのものに、彼女たちが自分に感じさせてくれる空気に、強く惹かれ、焦がれていたのだ。」(p.326.327)
  • 2026年6月15日
    カラー改訂版 世界一わかりやすい英文法の授業
    網羅的な文法書ではない。 ただ、本質的なことを教えてくれるので英語への理解が確実に深まるし、語学の楽しさを改めて感じた。 must とhave toの違いとか、仮定法の雰囲気とかを筆者なりの方法で明確に解説。 これを高校生が面白がれるかはわからないけど、面白いと感じるなら英語の学習がかなり進むし、こういう俯瞰的な見方ができれば、最終的な英語力は高くなる気がする。
  • 2026年6月11日
    単純な脳、複雑な「私」
    脳科学者の、高校での特別講義。一部難しいところもあったけど、わかりやすく面白い。脳に関する蘊蓄がたくさん。脳の仕組みの精緻さといい加減さを感じられる。自分の理解とズレがあるところがかなりあって、これこそ読書(知識の獲得)の醍醐味。 HPでアニメーション公開していたり、パラパラ漫画が仕込まれていたり、ギミックも凝っていていい。 脳は騙せる。騙せないところもある。騙せば一時的には上手くいくけど、あまりに乖離が酷いと心身のバランスを崩してしまうこともあると思う。この匙加減は難しそう。 自己組織化とか創発とかが理解しきれなかったから、また読む。 「とくに実験科学が証明できることは、『相関関係』だけだということです。因果関係は絶対に証明できません。(中略) つまり脳がそう解釈しているだけ。因果とは脳の錯覚な訳です。」(p.28-29) 「全体をひとまとめに認識するやり方のことを『ゲシュタルト群化原理』と呼びます。」(p.43) 「もう一歩踏み込んで言えば、『正しい』というのは、『それが自分にとって心地いい』かどうかなんだよね。その方が精神的には安定するから、それを無意識に求めちゃう。つまり、『好き』か『嫌い』かだ。自分が心地よく感じて好感を覚えるものに対して、僕らは『正しい』と判断しやすい。」(p.130)
  • 2026年6月4日
    ありか
    ありか
    母子の話。びっくりするような事件がある訳ではなく、日常を丁寧に丁寧に積み重ねて、人の成長を感じさせてくれる。 ひかり(5歳-6歳)の言動がかわいすぎる。名前の通りこの話の光・希望となっているし、「おけつもの」とか「落ちてないし、こぼれてないよね?」など言葉でも救ってくれる。 ラスボスとの戦いはきついところがあるが、成長に必要な展開。 不安があることはわかるが、颯斗・三池・宮崎が最高。そこに林田も加わり、無敵の布陣に。ただ、現実はこの「家族・ママ友・仕事」においていい関係が築けている人がどれほどいるか。ネタバレするとシンママが上手くいくストーリーで、とても希望に満ちているけど、どうにもならずしんどさに押しつぶされている家庭がたくさんあるんだろうな。似たような状況にある人に、希望も絶望も与えうる物語だと思う。薄い依存先をたくさん作ることの大切さ。 「美空(みそら)を育てることに必死で(後略)」(p.52) 初めて「美空」と呼ばれる。「ママ」と「姉さん」はもっと前に出てきている。「美空」としての自分があまり認められず、好きになれていないんだろうな。 「(前略)じゃなかった。すごくうれしい。」(p.106) 美空がどんどん変わっていく。 「宮崎さんの子どもさんなら、それこそしっかりしてそうですけど」(p.115) 難癖に近いけど「子どもさん」っていうゆるい表現が、おおらかさとかを感じさせて凄くいいと思った。 「私なら、ひかりを笑顔にできる。つらさを和らげることができる。私にしかできないことがあるのだ。」(p.210) 完全に仕上がった。 こちらのリテラシーの問題だけど、会話のリアリティって本当に難しいと感じる。6歳が「まっさら」って使うかなとか、大人同士の会話を子供って意外と聞いてない?とか。
  • 2026年6月2日
    武道館
    武道館
    Next Youという6人組アイドルグループから1人が脱退するところから始まる。 愛子は小さい頃から歌ったり踊ったりするというアイドル的な行動が大好きで、選択・決断を繰り返してアイドルをやってきた。グループの目標である武道館のライブが近づいてくる。しかし、あることがきっかけで一度立ち止まることになる。時を同じくしてエースの碧も大きな問題と向き合うことを決断する。 アイドルファン・アイドル自身必読の書なのではないか。アイドル=偶像、この幻想の上で成り立っている「ビジネス」だと。よく使われる言い回しだが、彼女も一人の人間なのだという意識があれば(熱狂は薄まるけど)平和になる。もちろん運営側が売り上げを出すために熱狂を生み出そうとしている面もあるけど。 時代は違うけど、イン・ザ・メガチャーチとペアリングして読むとより味わい深い。 太ることを気にする真由とラーメンに行くシーン、名古屋に車で行くシーン、振付の先生のアジテーションもいい。 関連する仕事の話が挟み込まれているのも立体感を増している。 全体的にビジュアル・視線を重視した作品だと感じた。
  • 2026年5月30日
    ウォード博士の驚異の「動物行動学入門」 動物のひみつ
    動物の社会性とその生態についての分厚い本(700ページくらい)。まず文章が面白いし読みやすい。どれくらい正確なのかは分からないけど、動物の行動を「反射・本能」ではなく「感情・関係性」に寄せて説明していくから、物語のように話が進む。 種や食物連鎖などで関係しそうな動物を数珠繋ぎで紹介していってくれるから、意識が途切れない。 バッタの孤独相と群生相の話は、社会性が低いと感じている自分にとっては、拠り所にしたくなる話。 クジラや象など大きい動物はやっぱり人間的というか、わかりやすくて面白い。逆にアリやオキアミのように小さな生物は反射に近いような、でも種の存続のために最適化されてきた行動がわかって興味がわく。 最後はありがちだけどチンパンジーとボノボ。やっぱりここは「人間」について考える上でとても重要な要素だと思う。似てるけど違う、違うけど似てる存在。 各動物、性差がありそれがそのまま社会的な役割の差にもなっている。人間はここから脱しようと試行錯誤しているけど、日々SNSでは議論が起きている。でもそれはしょうがないなと思った。人間しかやらない(観測した範囲では)ことをやっているんだから、試しながら苦しみながら人間らしい営みを見つけていくしかないと思う。 他の動物と比べて、人という動物は脳とか思考、情緒みたいなものの能力が高い。ただ、それで種全体の幸福量みたいなものが増えていってるのかとか、どんか要素があればよりよい種族と言えるかなど、比較しながら「人」について考えるきっかけをたくさんくれた本になった。 「シロアリの側も絶えず偵察活動をしている。アリの隊列が近づいてくれば、アリたちの発するわずかな振動で察知できるよう常に警戒しているのである。」(p.124) 「鳥たちはいわば『伝統主義者』であり、自分の周囲の社会に影響を受けやすいのだと言える。」(p.263) 「六百万年というと非常に長い時間のように思う人も多いかもしれない。レストランで料理の提供を十五分待たされただけで怒り出す人がいる時代なのでそれも無理はない。」(p.560) 「チンパンジーは、自分と敵対する相手が背後から近づいて来た時には、たとえ、恐怖の表情を浮かべてしまったとしても、いったん気持ちを落ち着かせ、口を閉じて真剣な表情に変えてから後ろを振り向く」(p.582)
  • 2026年5月30日
    タタール人の砂漠
    タタール人の砂漠
    澱み、ロマン、ブルシットジョブ。 20歳くらいで国境にあるバスティアーニ砦に配属される軍人・ドローゴの話。砦の目の前には砂漠があり、砂漠の奥にはタタール人がいて、いつ衝突するか分からない国境警備。 人生を味わう小説。思い通りにいかない、悩む、楽観主義に寄りかかって時間だけが過ぎていく、集団心理に巻き込まれる。 派手なエンタメが好きなので序盤(五分の一くらい)は情景描写多めで進まなかった。何度も寝落ちしてしまった。SNSでの紹介の言葉が刺さらなかったら、途中で投げ出していたかも。でも、今は読んでよかった、時々思い出すだろう本になった。 「その間にも、机の正面に掛かった振り子時計は人生をすり潰し続けていた。」(p.171) 「また一晩無駄に潰えようとしていた。」(p.264) 「さき」を「先き」、「戦」を「戦さ」と表記することにどんな意味があるのだろう。現地イタリアは分からないけど、日本では初版が2013年に出ている本でこうすることの意味が捉えられず、少しノイズに感じた。 以下ネタバレ 幻想を共有し、時間を潰していくところが苦しい。 ラッザーリの死を、ドローゴのせいにされていたが、ここから砦の人々の敵対感がより強くなる。 戦を期待しつつ、ないとわかっている。ここにいてはダメだと思いつつ、滞留してしまう。このアンビバレントな感じが本当に「人間」って感じがする。 時間のジャンプと経過の表現が上手くて、一瞬で20年くらい飛んだり、一晩にたくさんのページを費やしたり。その伸縮する時間感覚みたいなものも表現できてたと思う。 最後、解放されたのかもしれないけど、自分には辛い結末に思えた。
  • 2026年5月21日
    星間商事株式会社社史編纂室
    社史を作っていく中で会社の秘密に気付きドタバタするコメディ。 主人公の幸代は同人誌を友人と作っていて、そっちのパートと社史編纂のパートがある。 社史編纂室のメンバーはキャラが立っていてとてもわかりやすい。
  • 2026年5月14日
    PRIZE-プライズー
    熱狂というのは、好意的な場面で使われがちな言葉だ。ファン、応援、渦。ただ、最近その愛着や思い入れの度合いから「熱」よりも「狂」の方を感じさせる事象も目立つように思う。 本作は、直木賞を切望する作家の天羽カインと緒沢千紘という編集者が二人三脚で直木賞を目指す物語である。この本筋に愛憎をまぶしまくって、煮詰めていく。 聖書の中で最初の殺人者と言われるカイン。やはりこの名前を冠しているだけあって天羽カインの攻撃性はとどまるところを知らない。編集者に怒鳴り散らし、使用人が運転する車では(作中でも触れられるように)某女性議員のように振る舞う。しかしそれは全て「読者のため、作品のため」というお題目で、また売れっ子作家であるという実力によってなんとなく見逃されている。 千紘は天羽のファンでありつつ有能な編集者だ。 その2人がお互いを唯一の理解者だと錯覚していくことで、物語が加速していく。 天羽の視点で語られるとき、彼女のフィルターを通して見える世界とフィルターが外れた(客観的な)世界の差異は本当に恐ろしい。ただ、これは人間のもつ性質で、自分にも当てはまるだろう。 中盤で「もう終わってもいい、十分面白かった」と思ったが、その後も展開しテセウスの船が出現してから特に狂気が暴走して想像していなかった終わりを迎えた。 単純に出版業界ものとして面白かった。そこに、ミステリー、シスターフッド、サイコパスなど色々な要素が無理なく載せられていて、苦しい場面もあるものの、一気に読んでしまった。 軽井沢と東京の二つの土地。 (あまり男女論みたいなものは得意ではないが)キーマンになる女性たち。 前時代的な「ヒステリックな、仕事のできる女性」 「ブランドの名前や格は畢竟、所有する者の自己満足のためにある。」(p.36)
  • 2026年5月12日
    小説、この小さきもの
    小説に関する評論。小説には人々の人生のどこが、どう切り出されてきたのか。300年弱の歴史でどう変化・進化してきたのか。語り手、時制、時代的な価値観など様々なトピックから読み解いていく。挟み込まれる3つのコラム、テーマがとてもいい。「文化盗用」「古典の浄化」「市民検閲」 まず、小説に対する認識や感情、期待が自分とは異次元だ。「小説を読むことは自らの死を認知することに似ている」(p.341) 解像度が違いすぎる。 「偉人を讃えて出世するより、孤独なひとりの乙女に読まれる詩を書けと言うのだ。」(p.55) 描かれる中身、対象が変化してきた。 「近代より前には、神とより深くつながるためには独りでいることがむしろ大事だった。」(p.71) 孤独というもの自体に大きな変化が見られる。ソリチュード、アイソレーション、ロンリネスの違い。「個人」というものも時代を経ることで変わってきている。そう考えると、人間の感情だって変化する。逆に感情や物事の捉え方こそ、身体に比べて変化がしやすい。 「小説が感情の文芸として発達し、孤独と共感という要素が前傾化してくるのは先述したように十九世紀半ば以降だ」(p.108) 内面をどう表出するのか。 「近代化のなかで孤独に対してセンシティヴになっていた人びとは、寄る辺なさゆえに小説という散文文芸を発達させ、デーモンを心に飼ってむしろ孤独と不安を増幅させていった。」(p.118) 並行して何冊か読んでいたのもあるが、この本は読み終わるのに1ヶ月強かかっている。ただ、実を言うと読み終わったと言うのは誇張で、全文を視線が通過したというレベルでしか理解できていない。知識・能力・問題意識・興味関心がギリギリかするくらいで、本当に目が滑るという感覚がずっとあった。 (勿論こちらの問題として)理解が曖昧な言葉を使って、知らない言葉が説明されてる。ほぼ全てのページに分からない単語が使われている。ある地点から結論までのジャンプが大きすぎて飲み込めない。かなり苦しい読書体験ではあったけど、ギリギリ理解できるところもあって「なんか面白そう」「なんか凄まじそう」という期待がずっと持続していた。これをサラッと理解できるよう脳を鍛えていきたい。1%くらいは掴めたかな。
  • 2026年5月11日
    十戒
    十戒
    和歌山の南方にある孤島、枝内島は所有者が亡くなったことで再開発の話が持ち上がる。その下見のために関係者が訪れる。遺族、開発会社、不動産屋、工務店、旧友。すでにミステリーの設定と登場人物が揃っている。 ミステリーを読み慣れていないけど、この本のアイディアは面白いと感じた。 以下ネタバレ 爆弾、十戒(ルールとその追加)という条件のせいで全員の行動が制限される。仮の犯人を仕立てるために、そっちに誘導する証拠を残し、十戒をフルに活用する(そのために設計した)真犯人。 3日で解放される約束だけど、殺人犯との約束って信頼していいのか、この顔を合わせてる中に犯人がいるんじゃないのか、島の外の事情がまずい、など色んなストレスで追い詰められていく。 真犯人との密約、サイコパスっぽい描写とあっけない最後の別れが不穏さを残す。
  • 2026年5月6日
    他人屋のゆうれい
    叔父の死後、その部屋に住むことになった大夢。派遣の仕事でお金には余裕が無い。兄にも劣等感を抱き、後ろめたさもある。新しい部屋の向かい側に「意識高い系」本屋の小石川がいる。気に入らない。マンションの管理人はいつも怒っていて、とっつきづらい。中盤での独白、世界を愛しきれない事情。 幽霊の出現とその謎の解明を通して少しずつ心の殻にヒビを入れていく。大夢の成長物語。 小石川に対する冷たさとかは少し受け入れにくかった。 叔父さんがやっていた他人屋(なんでも屋)。周りの人たちのために汗を流すという行為は、世界との繋がりを保つし、大夢の成長に繋がっている。 無茶苦茶なようで「無くはないか」とギリギリ思わせてくれるところが王谷さんの好きなところ。
  • 2026年5月5日
    この世にたやすい仕事はない
    五つの短期仕事を経験していく主人公。なくはないだろうけどニッチな仕事、それぞれの事情と独特な同僚が話の波を作る。 「ただ祈り、全力を尽くすだけだ。どうかうまくいきますように。」(p.347) 迷いながら目の前の、個々の問題を解決していく。それが回復に繋がっていく。やっぱり現在の仕事と関係ない仕事をすることで本業に、よりうまく取り組めるってあると思う。企業に余裕が無いと厳しいんだろうが、サバティカル休暇とか副業可にすることが本業の生産性やモチベーションを高めると思う。 これは的を射ていなければ、悪口になってしまうかもしれないが、文章のよれ・無駄・逡巡が感じられて、それが主人公の不安定さを表しているように感じた。
  • 2026年5月4日
    マイクロスパイ・アンサンブル
    これ、猪苗代湖周辺の人としてリアルタイムで連載(?)追えたら最高の読書体験だったろうな。売れっ子作家が、自分の地元を舞台に年に一回。民芸品とかが出てきて嬉しかっただろうな。 スパイと現実、二つの世界が交互に語られ混ざり合ってハッピーな結末。序盤は「グライダー」と「エンジン」がキーワードとして出てくる。恐らくエンジン積んでる人を行動力のある人としているんだろうけど、グライダーみたいな人に魅力を感じる。 こっちとあっちのやりとり。そっちの出現。 読みやすいっていうことなんだと思うけど、伊坂幸太郎の作品は読んでる時の時間の早さが異常。続き読みたいとか、会話が多めだから文字数がとかあるんだろうけど、すっと馴染んでくるから気づいたら読み終わってる。理解しにくいところがなくて、物語との相性ももちろん、想定する読者の層に自分が収まってるんだと思う。
  • 2026年5月4日
    一次元の挿し木
    一次元の挿し木
    クローン、挿し木、ループクンド湖、新興宗教。様々な要素がうまく絡みあって幻想的とも言えるクライマックスへ。語り部、時制が章ごとに変わるのはとても好みの書き方。武器としての遺伝子学は強いな。 牛尾がとにかく強烈。 ただ、サスペンスとして必要なんだろうけど「バレるだろうなっていう状況での、秘密の場所への侵入」がとても苦手なので、あのシーンは辛かった。少し捻られてるけど冷めてしまう。あとイケメンの力で乗り越えすぎかもしれない。 以下ネタバレ 謎の義妹・紫陽の存在感が大きいし、その不在が原動力にもなる。ラストで2人が紫陽から卒業(解放)できてしまうのが、急すぎるしあまり納得できなかった。紫陽との過去は、少し美化され都合が良すぎる気もする。 途中の精神の乱れを疑われ「誰が正しい?」となる部分、凄くハラハラするし、流れの作り方がすごくいい。 樹木の会の設定が中途半端で、もう少し権力とか情報を持っててもいい気がする。それかもう少し力が弱いか。 気になる所がないわけではないけど、遺伝子ものとしてとても面白いし、読みやすい。あっという間に終わってしまって、面白さが残った。
  • 2026年5月2日
    QJKJQ
    QJKJQ
    江戸川乱歩賞作品。謎を解いて真実に向かっていくということではミステリー。殺人者が出てくる。伏線が繋がっていく後半、とても気持ちのいい流れ。もう一回読んだら、もっと発見があるだろうな。タイトルはあんまり納得できてない(理解できてない) Ca→Abという架空の組織はリアリティがある程度あってよかった。鳩ポンのあやしさと急変ぶりが少し冷める。実例があるのかもしれないけど、主人公の記憶とか父の計画・読みに関してはファンタジーだなと感じた。
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