不安定 "怪談小説という名の小説怪談" 2026年7月9日

怪談小説という名の小説怪談
澤村伊智さんは自分にとって「知ってるし読んでみたいけど実際手を伸ばしたことのない作家」という領域に属していた。 読書欲は無限と言っていいほどあるのに、時間は悲しいくらいに有限なので、この領域に属する作家は増える一方、きっとこれからも増え続けるのだろう。 * 本書は角川ホラー文庫から2026/6/26刊行のもので、奥付の隣頁には "本書は、二〇二五年六月に新潮文庫より刊行された作品に書き下ろし「ノンフィクション」を加えたものです。" という記載がある。 新潮社から角川へ版権を移した経緯について、澤村伊智さんは本人のX(2026/2/5の投稿)で詳しく説明をしている。 また、本書の「二次文庫版あとがき、或いは田舎のおじいさんたち」という文章にも "大まかに言えば、「新潮社が自社媒体に民族差別的な記事を掲載し、抗議をした被害者の一人に会社組織として極めて不誠実な対応をし続けているから」である。" と記されている。 自分はその、新潮社の記事の話はニュース等見聞きして知っていたので(知りたくなかったけど)、 今日、書店で本書を見かけた時に 「今こそ、澤村伊智という作家に手を伸ばす絶好の機会なのでは…⁉︎」 と思った。 このようにして意思表示をする作家がいる。 『BUTTER』の版権を新潮社から河出書房新社に移したことがニュースになっていた柚木麻子さんがその好例なのだろう。 その作家の意思表示に対して、版権を移した先の新しい文庫版を買って読む、という行動は読者ができるささやかな「連帯」だと思う。 (その「連帯」に、新潮社から出ている作品とその作者を貶める意図はない。作家にはそれぞれの事情があろうし作品の価値も変わらない。自分も新潮文庫で好きな本いっぱいあるし。) * 世の中全体が良くない方向に進んでいるなあ…と、どうしようもなく暗い気持ちになることが最近多い。 自分にできることなんて何もないんじゃないか、だって選挙に行ったって何も変わらなかったじゃないか(それどころか前回の選挙でより良くない方向に進んだじゃないか)と無力感に苛まれ、投げやりにもなる。 でも、できることというのは何も選挙に行くことだけではないのだ。意思表示をすること。意思表示をした人に連帯すること。できることはある。 どの本を買うか、という選択は立派な意思表示であり連帯なのだ。「そんなことで大げさな」と嗤われてしまうような、そんなささやかな選択を少しずつ重ねていきたいなと思う。 * …で、それはそれとして、この怪談小説、読むのがすごく楽しみ。
読書のSNS&記録アプリ
hero-image
詳しく見る
©fuzkue 2025, All rights reserved