酸菜魚 "帰れない探偵" 2026年7月9日

酸菜魚
酸菜魚
@suancaiyu
2026年7月9日
帰れない探偵
帰れない探偵
柴崎友香
探偵のお話だけど、紀行のよう。 探偵の仕事をしながら、自分の国に、家に、帰れなくなった人生を思いながら過ごす女性が主人公。 探偵といっても、映画やドラマのように危険な目にあったりすることはあまりない。人の話を聞き、資料調査のために図書館に通い、探し物をする。任務が終われば、また違う国の任務へ就くために少しずつ慣れてきた街を離れる。 国や街を特定するような名詞は使われない。おそらく日本ではない国で日本人ではないと思われる登場人物が、日本人名(仮名)で呼称されたりするので、だんだんどこにいるかわからなくなってくる。日本語以外で会話しているようだけど、表現上は日本語で書かれる。これも想像の具体性を削ぐ。 探偵として偽名を使い、拠点の定まらない生き方をしている主人公の世間とのつながりのなさ、匿名性が読み手にも感じられるようにできているのかな、と感じた。 そのせいで、ずっと靄がかかったような感じのある作品。 それでも最後、ぼやけた輪郭線が急にくっきりとまとまるような場面がくる。 長い放浪から「帰ってきたな」と思わせる、とっても素敵な描写のために、靄の中を探偵と一緒に歩いてみるのをおすすめします。
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