
人工芝
@_k55y
2026年7月12日
あなたの不幸は蜜の味
乃南アサ,
他,
宮部みゆき,
小池真理子,
新津きよみ,
沼田まほかる,
細谷正充,
辻村深月
読み終わった
人間の心の奥底にひそむ感情を静かに、
しかし容赦なく映し出す短編集だった。
タイトルから想像する以上に描かれているのは「悪人」の物語ではない。
誰の心にも芽生えうる嫉妬や優越感、承認欲求といった感情が、ごく自然な形で物語へ溶け込んでいる。
そのため、登場人物を責めきれない一方で、
自分の中にも似た感情があるのではないかと問いかけられる瞬間がある。
短編ごとに作風は異なるが、共通しているのは人間の弱さを見つめる鋭い視線だ。
派手な展開に頼るのではなく、日常の延長線上にある小さな違和感や心の揺らぎを積み重ねることで、読後にじわりと余韻を残していく。
一冊を通して感じたのは、「人は他人を見ているようで、実は自分自身を映している」ということだった。
だからこそ、この作品は単なるイヤミスでは終わらない。
人間という存在の複雑さや危うさを、静かな筆致で描いた一冊として強く印象に残った。



