
ピエ
@pie_202
2026年7月12日
嘘つきアーニャの真っ赤な真実
米原万里,
長尾敦子
読み終わった
『オリガ・モリソヴナの反語法』があまりに面白かったので。表題作の冒頭をKADOKAWAの特設サイトで読んで、小説だと思って手に取ったのだが、米原のプラハ・ソビエト学校時代の同級生に関するノンフィクションだった。アーニャって実在の人物だったんですか!?
内容は『オリガ…』に負けず劣らず面白い。というより、『オリガ…』に出てくる個性的な同級生や先生たち、過去の記録を漁って真実に迫っていくプロセスは、ほぼ米原の実体験に基づいていることが実感できる。
米原が特に仲良しだった、ギリシア人のリッツァ、ルーマニア人のアーニャ、ユーゴスラビア人のヤスミンカにまつわる3編。どれも、少女時代のエピソードと、中年になった米原が彼女らの消息を尋ねてゆくパートで構成されている。
少女時代の話はユーモア全開で吹き出してしまう箇所もあったが、大人になってからの再会には思わず涙ぐんでしまった。
エッセイ的な面白さだけでなく、各国の子どもたちが通ったソビエト学校を内部から語る、時代の証言としても貴重な作品である。祖国を離れた子どもたち、特に亡命者など帰れない理由の強い子ほど愛国心を強く噴出させていた、という分析が鋭い。
一方、自分の親が属する各国の共産党とソ連との関係が悪化すると、子どもたちも学校で居心地の悪い思いをすることになる。多くの先生や同級生はなるべく気遣って過ごしてくれるものの、当の本人たちはその空気を敏感に感じ取っている。悩みなどせいぜい部活の人間関係くらいであった私の中学時代とは、何という隔たりだろうか。
大人になってからの再会パートでは、3人の祖国の政治事情や彼女ら自身の複雑な立ち位置に考えさせられることも多い。
特に3話目のヤスミンカの話は、ユーゴスラビア紛争の最中だ。民族と宗教が複雑に入り交じる国のあり方は、日本で限りなく支配的な地位にある大和民族たる自分には実感できないが、だからこそこれまで積極的に知ろうとしてこなかったことを恥ずかしく思う。




