ユメ "とりあえずウミガメのスープを..." 2026年6月21日

ユメ
ユメ
@yume_bookworm
2026年6月21日
とりあえずウミガメのスープを仕込もう。
宮下奈都さんの書くエッセイが好きだ。綴られているのは何気ない日常で、でも読んでいると不思議なぐらいそこにある家族の生活が尊く、愛おしく感じられる。本を閉じる頃にはいつも、自然と宮下家のひとびとの幸せを願ってしまう。一読者にすぎない私が遠く離れた地で暮らす顔も知らない著者一家の幸福を祈ることが、はたして私自身に何をもたらしているのか、うまく言語化することは難しい。だが、それが善きものであることだけは確かで、胸が温かくなるのだった。 当たり前のようだが、日々生きていれば様々な煩わしいことが起こる。胸中穏やかではいられないときだってある。それでも、そうした喜怒哀楽のすべてをきちんと受け止めたうえで、宮下さんは家族との暮らしに優しい眼差しを向けている。だから、宮下さんのエッセイを読むとほっこりした気持ちになれるのだろう。 食べることは生きることそのものだからこそ、食をテーマにしたエッセイ集である本書からは家族の生活がいっそうくっきり浮かび上がってくるように感じられた。「あの味が好きだった、と思い出すしあわせな記憶の上に、毎年少しずつ改良したおいしさを重ねていけるのが家族の楽しさだと思う」という文章が好きで、この一文が宮下さんの幸せな家族観を象徴しているような気がする。幸せな生活というのは何も常にキラキラしているわけではなく、むしろ地味だったり、時に刺々していたりする、それらをすべてひっくるめて愛することなのだと教わった。
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