サブレとポッポの往復書簡 "蜜蜂と遠雷" 2026年7月16日

蜜蜂と遠雷
チョコレートコスモスを読んだときにも感じましたが、恩田陸さんの小説は、情景や心情を地の文章で表現するのがとても上手だなぁと改めて感じさせられました。 ピアノコンクールを舞台に、天衣無縫を体現したかのような少年、塵に触発されて、彼を含む回りの人物が一回りも二回りも成長していく、特に亜夜の心の成長にスポットライトが当てられた展開になっていて、昔の挫折を乗り越えていく姿に感銘を受けました。そして、社会人になっても、夢を諦めなければ報われるかもしれない、という前向きな気持ちを、明石さんのエピソードから貰えたような気もします。 きっとこの小説の中で、塵は音楽という名の花粉を受粉させる蜜蜂であり、皆が外の世界に音楽という唯一無二の花を咲かせるための鎹になっているのだと感じました。 亜夜にはまた素直に弾きたいと思える自分を、奏にはヴィオラへの転向の決意を、マサルには演奏家でありながら同時に作曲家という夢を、そして明石には音楽を生活の中だけに留まらせない可能性への一歩を、それぞれの音楽を携えながら、外の世界に連れ出してくれたのが、塵なのだと。
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